作者:オニオン侍
人数:4人(1:3)
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(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)
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時間:15分
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N「夢というものは、時折、現(うつつ)との境目を曖昧にする」
私「あ……ぁ……どうしよう……どうしようどうしよう……だって、急に……それで……私……」
男「は、ぁ……はぁ……せめ、て……君と……一緒に……」
N「血の滴る切先を、男に向け抗うように前へと突き出した」
私「い、いやっ……!!」
男「う"っ……ぐ……ぅ……」
私「来ないで来ないで来ないでったら……!」
男「……はぁ……は、ぁ……君の困った顔が……大好きだ……」
N「まさに無我夢中。刺して、刺して、刺して、そして」
私「はっ……はっ……う、動かなくなった……?」
母「お風呂で溶かすまでは上手く行ったけれど、これ、どうしようかしら」
N「暗がりが突然開ける。そこは、見覚えのある場所。自宅の一室だった」
私「あ、れ……?お母、さん……?」
母「あっごめんね、大丈夫、大丈夫だから。そんな困ったお顔しないで」
私「わ、わたし……」
母「大丈夫、大丈夫よ」
私「ひ、人……刺しちゃって……襲ってきたから、こ、怖くって」
母「大丈夫。お母さんが一緒よ。ほら、お父さんも」
私「お母さん……お父さん……」
母「それにね、ほら。もう、こんなになっちゃったから。何も怖くないでしょう」
私「……そ、れ……何……?赤い、ドロドロしたの……ゴミ袋に入れてるの……何……?」
母「…………問題はね、これをどう処理するかなの」
私「ね、ねえ……お母さん?……お父さん……お父さんってば……!」
母「あなた、何かいい考えはあるかしら?埋める?そうね、やっぱりそうするしかないかしら……」
私「…………お母さん、それ……」
N「ふと、それは聞いてはならないのだとそう思った。そして、不思議なほどに冷静さを取り戻しこう告げた」
私「……ううん、なんでもない。あのね、小分けにしてトイレに流したらいいって聞いた事あるよ」
母「トイレに……そう、わかったわ」
私「私、やるから。それ、かして?」
母「そう……そしたら手袋しなくちゃね。持ってくるわ」
N「瞬きをする。見覚えのある、自室の天井が視界に映る」
私「……あ、れ……?夢…………?」
母「おはよう、どうしたの?お顔真っ青よ」
私「お母さん……?」
母「ええ、あなたのお母さんよ。可愛い私の娘ちゃん、何か怖い夢でも見たのかしら」
私「私…………ううん、なんでもない」
母「そう。朝ごはんできてるから、降りてらっしゃい」
私「うん、ありがと」
回想、男「……はぁ……は、ぁ……君の困った顔が……大好きだ……」
私「ひっ……」
回想、男「……大好きだ……」
私「はっ……はっ……あれは、夢……あれは夢、あれは夢なんだから……」
N「そう自分に言い聞かせ、今日という日を過ごしていく。そしてまた、夜はやって来る」
*
N「暗闇。気がつけば、必死に狭い路地を走っていた」
男「逃げ惑う姿も可愛いね……はぁ、はぁ……ほら、もっと逃げないと」
私「ひっ……!だ、誰か助けて……」
男「もっと大きな声出さないと……は?なんだ、お前」
N「突如として男の声が途切れた。そして、鈍い悲鳴が上がる」
私「あ……ぁ……お父、さん……?その人、刺しちゃったの……?どうしよう、でも、私……ううん、助けてくれてありがとう」
N「瞬きをする。暗闇から一転し、自宅の風呂場が現れる」
母「消臭してっと……あとは温度設定を変えて……」
私「……あれ…………?おか、あさん……」
母「あら?!びっくりしたわ〜、いつの間に来てたのって…………あらあら、どうしたのそんなに泣いちゃって」
私「私……泣いて…………」
母「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて。あら、お父さんまで」
私「あ、お父さん…………」
母「ええ、なぜだか泣いちゃって」
私「私……私…………」
N「言葉を紡ぐ前に、私は意識を手放した」
母「あら、おはよう。……どうしたの、怖い夢でも見たの?」
私「おは……よう…………あれ……私、眠ってた……?」
母「ええ、それはもうぐっすり」
私「そっか……あのね、少し怖い夢を見てたみたい」
N「母の表情が一瞬強張った。そんな気がした」
母「そう……かわいそうに。もう少し、眠る?」
私「……うん、そうしようかな」
母「そう。それじゃ、おやすみなさい」
私「おやすみなさい」
N「同じ夢。人を殺す夢。今日は父親が代わってくれてよかった、など小さな安堵を感じる」
私「……夢、だよね」
回想、男「……はぁ、はぁ……ほら、もっと逃げないと」
私「ひっ……大丈夫、大丈夫……」
N「何度も言い聞かせながら今日も眠りについた。違和感の芽は、小さくも確実に芽生え、育っていく」
*
N「暗闇。直感的に、また同じ夢だとそう思った」
男「あ"あ"っ……ぐふっ…………」
私「……また……か……」
男「……は、ぁ……はぁ…………クソクソクソ……」
私「あ、お父さん…………また、代わってくれたんだ……ありがと……」
男「かはっ………ふざけんな……君と、一緒じゃなきゃ……」
N「瞬き。そして辺りに異臭と異様なほどの熱気が立ち込める。そこは使い慣れたはずの、自宅の風呂場だった」
母「ふぅー、もうちょっとかしらね」
私「夢……なのに、うう……すごい臭い……」
母「あらあら、お手伝いはいいっていったのに、来てくれたのね」
私「……うん」
N「浴槽に溜まった赤黒い液体をじっと見つめる」
母「無理はしなくていいのよ」
私「ううん、大丈夫。だって」
N「ふと、言葉を詰まらせる。その様子に母の表情が強張ったような気がした」
母「……どうしたの?」
私「ねえ、これ夢だよね?」
母「夢、ね。そうね。夢だといいわね」
N「母は再び黙々と作業を始めた。それからは、何も尋ねる事ができなかった」
*
N「人だったものを小分けにし、トイレに流す。流す。流す」
母「もう一息ねぇ。交代しなくて大丈夫?」
私「うん。お風呂場は綺麗になった?」
母「バッチリよ!お父さんも手伝ってくれたから」
N「父はついでにシャワーを浴びたようで、髪の先からは雫が滴っていた」
私「……お父さん」
N「私は無意識的に、父を呼び止めていた。それ以降、何の言葉も発さない私を父は不思議そうに眺めている」
私「ううん、何でもない。もう少しだから、頑張るね」
母「じゃあここはお任せして、私達はお夕飯の支度でもしましょうか」
N「人だったものを小分けにし、トイレに流す。流す。流す」
*
男「捕まえた」
私「い、いやっ……!お父さん……お父さん……!助けて……!」
N「ぎしり、と両腕が痛む。頬には固いアスファルトの感触。辺りは暗い路地裏のようだった」
男「一緒に、死んでくれるよね」
私「離して!離してぇっ……!」
男「ああ、夢みたいだ」
N「これも、夢のはずだった」
男「ずっと一緒に居ようね」
私「あ……ぁ……」
N「馬乗りになった男は、ゆっくりと愛しそうに私の首を絞めていく」
私「おと……さん……おかあ……さん……」
N「大丈夫。これも、夢のはずだから」
男「ああ、夢みたいだ!!」
N「大丈夫。これも、夢のはずだから」
~完~
【あとがき】
タイトルの通り、この台本は『私が今日見た夢の話』を読み物として体裁を整えただけのものです。中身も、意味も、オチもなーーーんにもありません!これはきっと、夢だったはず。