題名:帰宅部TA②
作者:オニオン侍
人数:4人(4:0)
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時間:20〜30分
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【配役】
○男性
●名前:三宅(みやけ)
概要:帰宅部のエース
●名前:家入(いえいり)
概要:帰宅部のホープ
●名前:実況
概要:実況に命をかけている
●名前:解説
概要:解説に命をかけている
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本文
*
実況「さあ、まもなく"帰宅部TA(タイムアタック)春の選抜決勝戦"が始まります」
解説「今日は快晴ですからね、いい成績が見込めます」
実況「帰宅部のエース、三宅選手がスタート位置につきました」
三宅「ふう……大丈夫だ。いつも通り……いつも通りに俺は家に帰る、そう、それだけだ……」
解説「普段よりも緊張した面持ちですね。こちらにも緊迫した空気が伝わってきます」
実況「続いて帰宅部のホープ、家入選手が位置につきます」
家入「この大会の記録保持者って、三宅先輩なんでしたっけ〜?」
三宅「家入……。ああ、そうだが」
家入「じゃあそれも、今日までっすね!」
三宅「……挑発してるつもりか?」
家入「やだなあ、そんなに睨まないでくださいよー!年下に負けるのが怖いからってえ」
三宅「結果が全てだ。軽口はそこまでにしておけ」
実況「両者睨み合い、熱い火花を散らしております」
解説「青春、ですね」
♪キーンコーンカーンコーン
実況「さあここで、放課後のチャイムが鳴り響く!戦いの火蓋が切って落とされたぁ!」
解説「良い滑り出しです」
家入「あっは!先パァイ、お先っすー」
実況「家入選手、華麗なスタートダッシュだ!」
解説「長い脚を活かした大きな踏み込み、素晴らしいです」
三宅「カーブ突入まであと5……4……3……」
実況「三宅選手ゥ!冷静沈着!眉ひとつ動かさず、見事なフォームで玄関へと滑り込みます!」
解説「彼の強みですね、どんな状況でも平常心を貫ける」
家入「っとと……」
実況「おっとおおお!家入選手、スピードを落としきれずカーブ突入後にフォームを崩してしまったぁ!」
三宅「予選の時から、何も成長していないな」
実況「ここで後続の三宅選手が追いつきました!」
三宅「下駄箱……生徒数2……よし、いける!」
実況「で、出たあああ!帰宅部名物、早履きいい!」
解説「無駄のない洗練された動きです」
家入「デカい面すんの、俺の前を走ってからにしてもらえますぅ?」
実況「フォームを立て直した家入選手、僅かにリードを保ったまま第一関門へと突入ううう!」
解説「第一関門、やたらと長い信号ですね」
家入「先輩、俺の強さって何か知ってますよねえ?」
三宅「……ツラがいいところだけだろう」
家入「あは!そんな風に俺の顔見てたんですか!えっち〜」
実況「おっとお!家入選手、スピードを上げていくう!」
解説「スムーズなギアチェンジですね。柔軟な筋肉がなせる技でしょう」
家入「先輩、俺にはね幸運の女神がついてんすよ」
実況「軽やかに信号を渡っていくう!三宅選手もそれに続いて、あーーっとぉ!三宅選手の目の前に無数のりんごが転がり出てきたああ!」
解説「おばあちゃんのお買い物袋が破れてしまったようですね。あたふたされてます」
三宅「信号の切り替わりまで残り7秒……りんごの残数8……左方手前から順に拾えば、間に合う!」
実況「優しい!三宅選手優しい!!慌てるおばあちゃんに声をかけながら、丁寧にりんごを拾っていくうう!」
解説「品種はこの季節美味しいサンふじですね」
家入「ああ、ツいてないっすねえ!先輩はお優しいからあ……そういうの、ほっとけないですよねえ」
実況「信号を渡り切った家入選手、悠々と第二関門へと進んでいきます!」
解説「第二関門、やたらと混んでる大通りですね」
三宅「これで全部ですね。お気をつけて」
実況「遅れをとってしまった三宅選手ぅ!りんごを拾い切り、信号へと猛ダッシュだ!」
解説「ここで赤信号につかまれば、かなりのロスになります」
三宅「点滅まで残り5……4……!」
実況「はやい!はやすぎる!三宅選手、間に合うかあああ?!」
三宅「3……2……!」
実況「信号が赤に!」
三宅「いける!!!」
実況「切り替わっ……ま、間に合ったああ!」
三宅「はぁっ……はぁっ……大通りまでの距離……残り200……」
解説「そして瞬く間に渡り終え、既に次の関門へと意識を向けているようです。これがエースたる所以でしょうね」
家入「あーあ、渡れちゃったんすねえ。まあ、こんな余裕勝ちしても面白くないすから」
実況「家入選手、第二関門へと到達!すごい人混みだあ!し、しかしモーゼが海を割るかの如く、人の波が真っ二つに分かれていきます!」
家入「わあ、お姉さん達あざまーす!」
解説「顔面の良さをフルに活かした戦術ですね」
実況「お姉さん方にご挨拶をしながら、大通りを駆け抜けます!」
三宅「……さすがだな」
実況「ああっとぉ!家入選手が走り抜けるや否や、割れた海は元へと戻っていくうう!三宅選手、行手を阻まれてしまいました!」
家入「先パーイ、お先に失礼しまーす!俺のやり方、真似してもいいっすからねー!できないと思いますけど!」
解説「家入選手の煽りは、一級品ですね。腹が立ちます」
三宅「俺には、俺のやり方があるんだよ」
実況「三宅選手!スピードを落とし、前方をじっと見据えております!」
三宅「……右……左斜め……40%調整……踏み込みまであと3……2……1……!」
実況「低姿勢で大きく踏み込んだあああ!人混みに突っ込んでいくうう!」
三宅「傾きマイナス3%……心拍、異常なし……」
解説「持ち前の観察眼を活かして、僅かな隙間をかいくぐっているようです」
実況「しかも小声できちんと、すいませんとお伝えしているうう!優しい!三宅選手、優しいいい!」
家入「ちっ……先輩らしいっすね……」
三宅「はぁ、はぁっ……左方確認……安全確保、出力20%アップ……!」
実況「第二関門突破あああ!!人混みを抜け加速して行きます!家入選手との差は150m!」
解説「最後の関門までにもう少し縮めたいところでしょう」
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