4037175_s

題名:わかつとき

作者:オニオン侍


---------------------------------------


※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、

無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


※エンディングが分岐します。

男役の方がお好きに決定なさってください。


---------------------------------------


時間:10分弱


---------------------------------------


※配役


○男性


名前:男

年齢:20代

概要:霊感が強い



○女性


名前:女

年齢:20代

概要:霊感はない


---------------------------------------


本文



○アパートの一室にて


男「おはよ」


女「おはよう」


男「…寝れた?」


女「んーん、でも大丈夫だよ」


男「そっか。お腹は空いた?」


女「うーん…大丈夫、かな」


男「…そっか。ごめん、僕は食べてもいいかな?」


女「もちろん!何食べるの?」


男「焼きそばでも作ろうかな」


女「いいねいいね、私も好きだったなー」


男「…あー、テレビでもつけとこっか」


女「あ…ごめんね?つい」


男「いや、僕の方こそ。ごめん」


女「…ふふ、2人して謝ってる」


男「(つられて微笑)…だね」


女「それじゃ一緒にお台所行こっか」


男「…動ける?」


女「このお部屋の中ならどこへだって行けるさ」


男「そっか。じゃあ、行こうか」


女「私も何かお手伝いできたらいいんだけどなぁ」


男「その気持ちだけで充分だよ」


女「ふふ、優しいなあ」


男「そんな事…ないよ。ほら、包丁持つから。そんなにくっついてたら危ないよ」


女「おっ、冗談言うなんてめずらしい!」


男「もう…ほら、からかわない」


女「ふふ、ごめんごめん」



男「(材料を切りながら)…僕は…」


女「なになに?」


男「…冗談のつもりなんて、なかったよ」


女「…えっ、あ…」


男「本気で、そう思ったんだ。…君の言葉を借りるなら『つい』…かな」


女「あ、ご、ごめんね…ありがとう…」


男「…いや、僕も…ごめん」


女「…えっと」


男「ごめん、でもね。2年経った。あれから2年も経ったんだ」


女「…うん」


男「君は変わらないのに、僕だけ変わるんだ。それなのに、僕は進めない。変わっていくのに」


女「ま、待って」


男「君はもう死んだのに、こうしてここに居る。あの日から変わらない姿で、ここに、僕の部屋に」


女「ねえ、落ち着いて」


男「(食い気味に)僕が…僕がいけないんだ。見えてしまうから…未練たらしく縋ってしまうから…」


女「待って、待ってよ」


男「触れられないのに、君がそばにいる…あまりに変わらない姿でそこにいるから…僕は君の死から『つい』目を逸らしてしまう」


女「待ってってば!!」


男「こんなに苦しい思いをするのなら…いっそ…いっその事、見えない方がマシだった!!」


女「…!!本当に、そう思うの?」


男「(大粒の涙をこぼしながら)…は、ぁ…はぁ…ごめん、ごめんね…でも、これは、僕の本心だ…」


女「…また、あなたを苦しませちゃった…ごめんね」


男「いや…力任せに怒鳴って、ごめん」


女「ううん、大丈夫だよ…。ねえ、嫌いになったって事じゃ、ないんだよね?」


男「嫌いになんて…なってない。むしろ、逆なんだ…こんなにも愛しいのに、僕だけが老いていく…それがたまらなく怖いんだ…」


女「……そう…かぁ…。そっか、そっか…ごめん、ごめんね?あなたが、私を見つけてくれたから嬉しくなっちゃって、『つい』…こっちに居座っちゃった…私、死んでるのにね」


男「……ごめん」


女「謝らないでよ。残された方が、悲しいもんね。私の方こそ、ごめんね」


男「……ごめん…」


女「やだな、そんなに、泣かないでよお…」


男「ごめん…」


女「もー…やだな、やだな…消えたくないよ。ずっとこのお部屋で、あなたと居たいよ…。でも、でも…このままじゃきっと、嫌われちゃうから。ちゃんと、おわかれ…しよっか」


男「…おわかれ…」


女「うん。2年前に、きちんとできなかったおわかれ。あなたはこっちで、私はあっちで幸せに暮らすための、大事なご挨拶」


男「……ごめん」


女「もー!謝らないの!これから必要な言葉はありがとうだよ。…あのね。私のこと、ずっと、ずっと愛してくれてありがとう」


男「愛して…」


女「死んじゃったのに、それから2年も大好きな人と暮らせたなんて、私はきっと世界一幸せ者!」


男「うん…僕の方こそ…愛してくれて、ありがとう」


女「…うん」


男「…見えない方が良かったなんて…酷いこと言ってごめん」


女「もー、また謝ってる」


男「そんな酷い男を、最後まで愛し続けてくれて、ありがとう」


女「ふふふ、酷くなんて全くないんだからね」


男「…ふふ、ありがと」


女「…それじゃ、これでおわかれだね」


男「…またね」


女「またね」


男「ありがとう」


女「こちらこそ。ありがとう」


↓エンディング分岐(A~C)



エンドA『わかつとき、歩み進めて』


男「静かに…なった…」


男「ああ……もう、二度と、会えないんだな…」


男「はは…これが、おわかれかぁ…」


男「そっか…そっか…こんなに、こんなにも…苦しいんだ……」


男「(ひとしきり涙を流し一呼吸つき)……君にもらったこの痛みと、きちんと向き合うよ」


男「…ありがとう」




エンドB『わかつとき、永劫に留まりて』


男「…もう、これで…会えなくなるんだな」


男「これでよかったのか…わからないな…」


男「ねえ、君は……ああ…いないんだ、そうだ…」

男「僕が望んだ結果は、こんなにもむなしいものだったのか…?」


男「ああ…だめだ、だめだ、待ってくれ、僕が悪かった…!」


男「…あ、ぁ……待ってくれ…」




エンドC『わかつとき、1つになりて』


男「…僕は、優しくなんてない…」


男「自分の事しか考えていなかった……」


男「死んでしまった、君の方がつらいはずなのに…」


男「ごめん。はじめから、僕がそっちに行けばよかったね」


男「……別れなんて、しなくていいんだ。君といられれば、君と同じ時間を過ごせるなら」


男「すぐ、行くよ」




掛け合い練習用に女役のみ録音しました!
よかったらご利用ください~!↓