オニオン侍の玉ねぎ亭

TRPGと声劇が大好きなオニオン侍のブログです!

カテゴリ:声劇台本 > 4人用

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題名:帰宅部TA②
作者:オニオン侍
人数:4人(4:0)
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【本作における著作権管理・利用について】
本作は著作権フリーであり、サークル活動、
無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。
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時間:20〜30分
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【配役】

○男性

●名前:三宅(みやけ)
概要:帰宅部のエース

●名前:家入(いえいり)
概要:帰宅部のホープ

●名前:実況
概要:実況に命をかけている

●名前:解説
概要:解説に命をかけている
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本文



実況「さあ、まもなく"帰宅部TA(タイムアタック)春の選抜決勝戦"が始まります」


解説「今日は快晴ですからね、いい成績が見込めます」


実況「帰宅部のエース、三宅選手がスタート位置につきました」


三宅「ふう……大丈夫だ。いつも通り……いつも通りに俺は家に帰る、そう、それだけだ……」


解説「普段よりも緊張した面持ちですね。こちらにも緊迫した空気が伝わってきます」


実況「続いて帰宅部のホープ、家入選手が位置につきます」


家入「この大会の記録保持者って、三宅先輩なんでしたっけ〜?」


三宅「家入……。ああ、そうだが」


家入「じゃあそれも、今日までっすね!」


三宅「……挑発してるつもりか?」


家入「やだなあ、そんなに睨まないでくださいよー!年下に負けるのが怖いからってえ」


三宅「結果が全てだ。軽口はそこまでにしておけ」


実況「両者睨み合い、熱い火花を散らしております」


解説「青春、ですね」


♪キーンコーンカーンコーン


実況「さあここで、放課後のチャイムが鳴り響く!戦いの火蓋が切って落とされたぁ!」


解説「良い滑り出しです」


家入「あっは!先パァイ、お先っすー」


実況「家入選手、華麗なスタートダッシュだ!」


解説「長い脚を活かした大きな踏み込み、素晴らしいです」


三宅「カーブ突入まであと5……4……3……」


実況「三宅選手ゥ!冷静沈着!眉ひとつ動かさず、見事なフォームで玄関へと滑り込みます!」


解説「彼の強みですね、どんな状況でも平常心を貫ける」


家入「っとと……」


実況「おっとおおお!家入選手、スピードを落としきれずカーブ突入後にフォームを崩してしまったぁ!」


三宅「予選の時から、何も成長していないな」


実況「ここで後続の三宅選手が追いつきました!」


三宅「下駄箱……生徒数2……よし、いける!」


実況「で、出たあああ!帰宅部名物、早履きいい!」


解説「無駄のない洗練された動きです」


家入「デカい面すんの、俺の前を走ってからにしてもらえますぅ?」


実況「フォームを立て直した家入選手、僅かにリードを保ったまま第一関門へと突入ううう!」


解説「第一関門、やたらと長い信号ですね」


家入「先輩、俺の強さって何か知ってますよねえ?」


三宅「……ツラがいいところだけだろう」


家入「あは!そんな風に俺の顔見てたんですか!えっち〜」


実況「おっとお!家入選手、スピードを上げていくう!」


解説「スムーズなギアチェンジですね。柔軟な筋肉がなせる技でしょう」


家入「先輩、俺にはね幸運の女神がついてんすよ」


実況「軽やかに信号を渡っていくう!三宅選手もそれに続いて、あーーっとぉ!三宅選手の目の前に無数のりんごが転がり出てきたああ!」


解説「おばあちゃんのお買い物袋が破れてしまったようですね。あたふたされてます」


三宅「信号の切り替わりまで残り7秒……りんごの残数8……左方手前から順に拾えば、間に合う!」


実況「優しい!三宅選手優しい!!慌てるおばあちゃんに声をかけながら、丁寧にりんごを拾っていくうう!」


解説「品種はこの季節美味しいサンふじですね」


家入「ああ、ツいてないっすねえ!先輩はお優しいからあ……そういうの、ほっとけないですよねえ」


実況「信号を渡り切った家入選手、悠々と第二関門へと進んでいきます!」


解説「第二関門、やたらと混んでる大通りですね」


三宅「これで全部ですね。お気をつけて」


実況「遅れをとってしまった三宅選手ぅ!りんごを拾い切り、信号へと猛ダッシュだ!」


解説「ここで赤信号につかまれば、かなりのロスになります」


三宅「点滅まで残り5……4……!」


実況「はやい!はやすぎる!三宅選手、間に合うかあああ?!」


三宅「3……2……!」


実況「信号が赤に!」


三宅「いける!!!」


実況「切り替わっ……ま、間に合ったああ!」


三宅「はぁっ……はぁっ……大通りまでの距離……残り200……」


解説「そして瞬く間に渡り終え、既に次の関門へと意識を向けているようです。これがエースたる所以でしょうね」


家入「あーあ、渡れちゃったんすねえ。まあ、こんな余裕勝ちしても面白くないすから」


実況「家入選手、第二関門へと到達!すごい人混みだあ!し、しかしモーゼが海を割るかの如く、人の波が真っ二つに分かれていきます!」


家入「わあ、お姉さん達あざまーす!」


解説「顔面の良さをフルに活かした戦術ですね」


実況「お姉さん方にご挨拶をしながら、大通りを駆け抜けます!」


三宅「……さすがだな」


実況「ああっとぉ!家入選手が走り抜けるや否や、割れた海は元へと戻っていくうう!三宅選手、行手を阻まれてしまいました!」


家入「先パーイ、お先に失礼しまーす!俺のやり方、真似してもいいっすからねー!できないと思いますけど!」


解説「家入選手の煽りは、一級品ですね。腹が立ちます」


三宅「俺には、俺のやり方があるんだよ」


実況「三宅選手!スピードを落とし、前方をじっと見据えております!」


三宅「……右……左斜め……40%調整……踏み込みまであと3……2……1……!」


実況「低姿勢で大きく踏み込んだあああ!人混みに突っ込んでいくうう!」


三宅「傾きマイナス3%……心拍、異常なし……」


解説「持ち前の観察眼を活かして、僅かな隙間をかいくぐっているようです」


実況「しかも小声できちんと、すいませんとお伝えしているうう!優しい!三宅選手、優しいいい!」


家入「ちっ……先輩らしいっすね……」


三宅「はぁ、はぁっ……左方確認……安全確保、出力20%アップ……!」


実況「第二関門突破あああ!!人混みを抜け加速して行きます!家入選手との差は150m!」


解説「最後の関門までにもう少し縮めたいところでしょう」


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題名:
これは、今日見た夢の話です

作者:オニオン侍

人数:4人(1:3)


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【本作における著作権管理・利用について】


本作は著作権フリーであり、サークル活動、


無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。


また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、


必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(配信などございましたらぜひお教えください!)


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時間:15分


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【配役】

○男性

名前:男
年齢:不明
概要:苦しんでいる



○女性

名前:私
年齢:20代
概要:最近、夢見が悪い


名前:N
年齢:20代
概要:ナレーション。私の心中のようなもの


名前:母
年齢:50代
概要:優しい女性


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本文




N「夢というものは、時折、現(うつつ)との境目を曖昧にする」


私「あ……ぁ……どうしよう……どうしようどうしよう……だって、急に……それで……私……」


男「は、ぁ……はぁ……せめ、て……君と……一緒に……」


N「血の滴る切先を、男に向け抗うように前へと突き出した」


私「い、いやっ……!!」


男「う"っ……ぐ……ぅ……」


私「来ないで来ないで来ないでったら……!」


男「……はぁ……は、ぁ……君の困った顔が……大好きだ……」


N「まさに無我夢中。刺して、刺して、刺して、そして」


私「はっ……はっ……う、動かなくなった……?」


母「お風呂で溶かすまでは上手く行ったけれど、これ、どうしようかしら」


N「暗がりが突然開ける。そこは、見覚えのある場所。自宅の一室だった」


私「あ、れ……?お母、さん……?」


母「あっごめんね、大丈夫、大丈夫だから。そんな困ったお顔しないで」


私「わ、わたし……」


母「大丈夫、大丈夫よ」


私「ひ、人……刺しちゃって……襲ってきたから、こ、怖くって」


母「大丈夫。お母さんが一緒よ。ほら、お父さんも」


私「お母さん……お父さん……」


母「それにね、ほら。もう、こんなになっちゃったから。何も怖くないでしょう」


私「……そ、れ……何……?赤い、ドロドロしたの……ゴミ袋に入れてるの……何……?」


母「…………問題はね、これをどう処理するかなの」


私「ね、ねえ……お母さん?……お父さん……お父さんってば……!」


母「あなた、何かいい考えはあるかしら?埋める?そうね、やっぱりそうするしかないかしら……」


私「…………お母さん、それ……」


N「ふと、それは聞いてはならないのだとそう思った。そして、不思議なほどに冷静さを取り戻しこう告げた」


私「……ううん、なんでもない。あのね、小分けにしてトイレに流したらいいって聞いた事あるよ」


母「トイレに……そう、わかったわ」


私「私、やるから。それ、かして?」


母「そう……そしたら手袋しなくちゃね。持ってくるわ」


N「瞬きをする。見覚えのある、自室の天井が視界に映る」


私「……あ、れ……?夢…………?」


母「おはよう、どうしたの?お顔真っ青よ」


私「お母さん……?」


母「ええ、あなたのお母さんよ。可愛い私の娘ちゃん、何か怖い夢でも見たのかしら」


私「私…………ううん、なんでもない」


母「そう。朝ごはんできてるから、降りてらっしゃい」


私「うん、ありがと」


回想、男「……はぁ……は、ぁ……君の困った顔が……大好きだ……」


私「ひっ……」


回想、男「……大好きだ……」


私「はっ……はっ……あれは、夢……あれは夢、あれは夢なんだから……」


N「そう自分に言い聞かせ、今日という日を過ごしていく。そしてまた、夜はやって来る」





N「暗闇。気がつけば、必死に狭い路地を走っていた」


男「逃げ惑う姿も可愛いね……はぁ、はぁ……ほら、もっと逃げないと」


私「ひっ……!だ、誰か助けて……」


男「もっと大きな声出さないと……は?なんだ、お前」


N「突如として男の声が途切れた。そして、鈍い悲鳴が上がる」


私「あ……ぁ……お父、さん……?その人、刺しちゃったの……?どうしよう、でも、私……ううん、助けてくれてありがとう」


N「瞬きをする。暗闇から一転し、自宅の風呂場が現れる」


母「消臭してっと……あとは温度設定を変えて……」


私「……あれ…………?おか、あさん……」


母「あら?!びっくりしたわ〜、いつの間に来てたのって…………あらあら、どうしたのそんなに泣いちゃって」


私「私……泣いて…………」


母「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて。あら、お父さんまで」


私「あ、お父さん…………」


母「ええ、なぜだか泣いちゃって」


私「私……私…………」


N「言葉を紡ぐ前に、私は意識を手放した」


母「あら、おはよう。……どうしたの、怖い夢でも見たの?」


私「おは……よう…………あれ……私、眠ってた……?」


母「ええ、それはもうぐっすり」


私「そっか……あのね、少し怖い夢を見てたみたい」


N「母の表情が一瞬強張った。そんな気がした」


母「そう……かわいそうに。もう少し、眠る?」


私「……うん、そうしようかな」


母「そう。それじゃ、おやすみなさい」


私「おやすみなさい」


N「同じ夢。人を殺す夢。今日は父親が代わってくれてよかった、など小さな安堵を感じる」


私「……夢、だよね」


回想、男「……はぁ、はぁ……ほら、もっと逃げないと」


私「ひっ……大丈夫、大丈夫……」


N「何度も言い聞かせながら今日も眠りについた。違和感の芽は、小さくも確実に芽生え、育っていく」





N「暗闇。直感的に、また同じ夢だとそう思った」


男「あ"あ"っ……ぐふっ…………」


私「……また……か……」


男「……は、ぁ……はぁ…………クソクソクソ……」


私「あ、お父さん…………また、代わってくれたんだ……ありがと……」


男「かはっ………ふざけんな……君と、一緒じゃなきゃ……」


N「瞬き。そして辺りに異臭と異様なほどの熱気が立ち込める。そこは使い慣れたはずの、自宅の風呂場だった」


母「ふぅー、もうちょっとかしらね」


私「夢……なのに、うう……すごい臭い……」


母「あらあら、お手伝いはいいっていったのに、来てくれたのね」


私「……うん」


N「浴槽に溜まった赤黒い液体をじっと見つめる」


母「無理はしなくていいのよ」


私「ううん、大丈夫。だって」


N「ふと、言葉を詰まらせる。その様子に母の表情が強張ったような気がした」


母「……どうしたの?」


私「ねえ、これ夢だよね?」


母「夢、ね。そうね。夢だといいわね」


N「母は再び黙々と作業を始めた。それからは、何も尋ねる事ができなかった」





N「人だったものを小分けにし、トイレに流す。流す。流す」


母「もう一息ねぇ。交代しなくて大丈夫?」


私「うん。お風呂場は綺麗になった?」


母「バッチリよ!お父さんも手伝ってくれたから」


N「父はついでにシャワーを浴びたようで、髪の先からは雫が滴っていた」


私「……お父さん」


N「私は無意識的に、父を呼び止めていた。それ以降、何の言葉も発さない私を父は不思議そうに眺めている」


私「ううん、何でもない。もう少しだから、頑張るね」


母「じゃあここはお任せして、私達はお夕飯の支度でもしましょうか」


N「人だったものを小分けにし、トイレに流す。流す。流す」





男「捕まえた」


私「い、いやっ……!お父さん……お父さん……!助けて……!」


N「ぎしり、と両腕が痛む。頬には固いアスファルトの感触。辺りは暗い路地裏のようだった」


男「一緒に、死んでくれるよね」


私「離して!離してぇっ……!」


男「ああ、夢みたいだ」


N「これも、夢のはずだった」


男「ずっと一緒に居ようね」


私「あ……ぁ……」


N「馬乗りになった男は、ゆっくりと愛しそうに私の首を絞めていく」


私「おと……さん……おかあ……さん……」


N「大丈夫。これも、夢のはずだから」


男「ああ、夢みたいだ!!」


N「大丈夫。これも、夢のはずだから」


~完~




【あとがき】

タイトルの通り、この台本は『私が今日見た夢の話』を読み物として体裁を整えただけのものです。中身も、意味も、オチもなーーーんにもありません!これはきっと、夢だったはず。


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トリックオアトリート!!


こんにちは、オニオン侍です!

お菓子の代わりに、ぜひ聞いてください!

ボイスドラマ企画に参戦いたしました!



こはるさんが企画と台本制作を

してくださいました。

【声劇台本】#HAPPYHALLOWEEN【こはる様作】



↑こちらから台本を楽しめますので、ぜひご覧ください♪

こはるさん、素敵な企画をありがとうございました!!


【サムネに使用されているイラスト・素材 -Credit-】 こはるさんが作成されたサムネイルをお借りしています。 ・CLOSET 様 https://sites.google.com/site/closetv... ・iconPOINT 様 https://www.iconcg.com/ ・えんドン 様 @ENDON_design https://twitter.com/ENDON_design

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題名:聲と贄と
作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について
本作は著作権フリーであり、サークル活動、無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。
また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

※グロテスク、暴力的な描写がございます。ご注意下さい。

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時間:10分弱

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※配役

○男性

名前:男
年齢:20代
概要:新しい「食材」を見つけた

名前:B
年齢:自由
概要:痛がりがち。演じ分けが忙しい。

○女性

名前:N(ナレーション)
年齢:自由
概要:雰囲気作りはあなたのお仕事

名前:A
年齢:自由
概要:痛がりがち。演じ分け有り。

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本文



N:ある日突然「全ての食材の聲」が聞こえるようになった。牛、豚、鶏…全ての動物、野菜、果物、穀物…全ての植物、その全ての聲がはっきりと。調理されてなお、その聲は聞こえ続ける。

A:いっぱいごはんくれてありがとう。

B:おひさまあびてきもちいねえ。

A:おかあさんおとうさんはどこにいったの。

B:いやだいやだいたいいたいいたいやめてやめてやめて。

A:あついあついあついあついよ。

B:どうしてすてちゃうのやだよ。

N:唯一、聲の聞こえぬ食材があった。

男:なんだ…こうすりゃよかったんだ。はは…大発見じゃね?

N:暗い台所の隅。部屋に滲む咀嚼音。

男:さすがに殺す前はうるせえけど…他のと違って料理しちまえば静かになるんだな。あー…静かに飯食えるの久しぶりだ…懐かしいな。

N:食材は皆全て、胃液に触れるまでその聲を上げ続ける。遡ること数時間前。街中のレストランにて。

A:ね、ねえ…どうしたの?顔、怖いんだけど…

男:俺さ、あんまり趣味とかなくてさ。

A:え…?あ、うん…。

男:美味い飯食うのが、まあ唯一の楽しみだったわけ。

A:わっ私も、美味しいご飯は好きよ。

男:それなのによ、最近の世の中どうなっちまったんだろうな?飯が、うるせえんだ。

A:う、うるさい…?

男:俺が何食おうか勝手だろ?それなのにぎゃーぎゃーわめいてよぉ…。これもそうだ、さっきからうるせえよ。

B:あつあつのハンバーグになれた。嬉しいなぁ。ねえ、早く食べてよ。さめちゃうよ。

A:えっと…これって…ハンバーグ、だよね?

男:食えっていう割によぉ、ナイフで刺してやったら喚くんだ。

B:あ"っ…い、いたい…いたいいたいいたいいたい…はやく、はやく食べて…はやく…食べて…。

A:…ごめん。何を、言っているのかわからないよ…。

男:……は?

B:はやくはやくはやくはやく、いたいいたいいたいいたいいたい。

A:体調悪いの…?大丈夫…?

N:テーブルに叩きつけられるナイフとフォーク。一同の視線が男に集まる。

男:…俺の頭がおかしいって言いたいのか?なあ。

A:ち、ちが…。

男:なあ、声、聞こえるよなぁ?うるせえこいつらの声がさぁ…。

B:いたいよ、いたいよ、食べてよなんでどうしてひどいひどいひどい。

A:ま、待って…落ち着いて話そう?

男:…ちっ。

A:えっあっ、待って!

N:会計を女に済まさせ、男は自宅へと足を運ぶ。怯えながらも女はそのあとを追った。

男:座れよ。

A:う、うん…。

B:女の子だ、いらっしゃい、ぼくを食べてくれるかな。甘くて美味しいよ!

男:うるせえなぁ!!静かにしてろよ。

A:ひっ…ご、ごめ…あ…。

N:女は肩を震わせ、思わず発しそうになった声を両手で塞いだ。

男:…お前はえらいなぁ。

A:え…?

B:なでなでしてる、いいなぁ、ぼくもぼくも。ママにあいたいなぁ。

男:黙れつったら、ちゃんと黙ってくれるもんな…。

N:男は優しく女の頬を撫で、口角を上げ微笑む。男の手には、包丁が握られていた。

A:ひっ…ぁ…あ…。

男:こいつらはさぁ。

B:い"っ…いたいいたいいたい、早く食べて早く!!!

男:刺しても。

B:いたいいたいいたいいたい!!

男:刺しても。

B:はやくはやくたべてたべて!!

男:この通りうるせぇんだ…。なぁ、聞こえるだろ?

A:…あ…、き、聞こえるよ、聞こえる。

N:必死に女は頷いてみせる。トマトからずるりと包丁が抜かれ、そして女に向けられた。赤い汁が滴り落ちる。

男:だよなぁ…じゃあ、今、こいつ、なんつってる?

A:え、あ…。

N:沈黙。カチカチと女の奥歯が揺れる音が微かに響く。

男:…そうか、そうなんだな、あーわかっちまったな、そうかそうかそうか、おかしいのは世界じゃねえのか、俺なんだな?なあ、だからそんな目で俺を見てんだろ。なあ?

A:あ"っ…い、痛い痛い、痛いよ…やめて、やめてやめてやめて!

N:向けられた包丁は、女の肩口にゆっくりとねじ込まれていく。

男:あーあーお前もうるせえな、黙れよ、なあ、黙ってくれよ!

A:ひっ…ひっ…うぐっ…ふっ…ふっ…ぐ…ぅ…。

男:……。…へえ。

N:必死に両手で口を塞ぐ女。その様子に、卑しい笑みを浮かべる男。容赦なく包丁は抜かれ、再度切り落とすように肩口に突き立てられる。

A:んんんんんんん"っ!!

男:偉いなぁ、お前は偉いよ。俺が黙れつったからちゃんと静かにしてんだもんなぁ?偉い、偉いよ。

A:ひっ…っぐ…ぅ…。

N:そして、優しく頬を撫でながら女の右腕を切り落とす。同時に、塞がれていた口が開けられ、激しい悲鳴が部屋に響いた。

男:あーあーうるせえ、うるせえ、うるせぇ…。

B:いたいいたいいたいいたい。

A:いたいいたいいたいいたい。

B:なんでこんなことするの。

A:な…んで…。

男:…うるせえ、黙ってろ。

N:男は、女の右腕に耳を寄せる。そして。

男:あはっ。

N:子供のような無邪気な笑みを浮かべ、嬉々として右腕にかぶりついた。それはあまりにも不気味で異様な光景だった。

男:…いいじゃん、いいじゃん、いいじゃんかよぉ。切り離しちまえば静かになんだなぁ、おい!

A:ひっ…ひっ…やめ、やめて…やめて…。

B:いたいいたいいたいいたい。

男:お前さ、俺のこと愛してるって言ってたよな。

A:…はっ…はっ…。

N:女の意識は既に途絶えかけていた。息が上がり、目は虚でどこを見ているかもわからない。

男:俺のために色々してくれたもんな、ありがとうな。

B:ひどいひどいひどい。

男:最後まで黙ってくれてんだな、ありがとうな。お前は最高だよ、最高の-。

間。

N:唯一、聲の聞こえぬ食材があった。

男:なんだ…こうすりゃよかったんだ。はは…大発見じゃね?

B:女の子食べ物じゃないよちがうちがうちがう。

N:暗い台所の隅。部屋に滲む咀嚼音。

男:さすがに殺す前はうるせえけど…他のと違って料理しちまえば静かになるんだな。あー…静かに飯食えるの久しぶりだ…懐かしいな。

N:幸せそうに女を食べる男の姿が、そこにあった。女を一口頬張り、堪能するように咀嚼する。

A:わたしはあなたをー。






【Special Thanks】


音声投稿サイトHEARにて、うまのしっぽ団様が投稿してくださいました!
キャラ達に魂を吹き込んでいただけて本当に嬉しいです!
こちらから登録なしでお聴きいただけますので、ぜひ!!↓

https://hear.jp/sounds/PyiVdA

草と肉
題名:草と肉

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、無料放送、

商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:10分弱

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※配役


象(♀):優しいお母さん

仔象(♂):元気な男の子

チーター(♂):まだまだ若僧

ライオン(♂)/象たち(どちらでも):お節介したくなる年頃/群れで動くよ

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本文

象「あら、また来てくれたのね」

チーター「どうも」

仔象「あー!チーターのお兄ちゃん!こんにちは!」

チーター「こんにちは」

象「こらこら、お兄ちゃんはまだ怪我してるんだから」

仔象「あ…ごめんなさい。まだ、あんよいたい?」

チーター「大丈夫だよ」

仔象「そっかー!よかったー!じゃあ今日は何してあそぼっか!」

象「坊や、あんまりお兄ちゃんに無茶させたらだめよ」

仔象「はーい!ほら、お兄ちゃん行こ!」


象「遊んでくれてありがとうねえ。この子ったら、遊び疲れて寝ちゃったわ」

チーター「いや…この子は、俺の恩人だから。これくらいは」

象「…前脚の調子はどう?」

チーター「もう、すっかり」

象「それならいいのだけれど。なんだか、少し痩せたみたいで心配しちゃって」

チーター「そう、すかね」

象「ええ、ちゃんとご飯食べれてる?やっぱり怪我が痛むんじゃ」

チーター「食べて、います。大丈夫です。少し、休んでたせいで体が鈍ってるくらいで」

仔象「んー…なんのお話してるのお」

象「あら、起こしちゃったわね。まだ寝てていいのよ」

仔象「僕もお兄ちゃんとお話する…」

チーター「…ふあー、なんだかお兄ちゃんも眠たくなってきちゃったな」

仔象「わあ、おっきなあくび!」

チーター「一緒に寝てくれるか?」

仔象「うん、いいよー!」

象「あらあら。坊やは本当にお兄ちゃんの事大好きねえ」

仔象「へへへー。ママ、おやすみなさーい」

象「おやすみなさい」


仔象「へへ」

チーター「どうした、ニコニコしてたら寝れないぞ」

仔象「お兄ちゃんに会えて、僕、嬉しいんだー」

チーター「…そうか」

仔象「あ…でもね、お兄ちゃんが、ワニさんにあんよ噛まれちゃったから、喜んだらいけないよね…ごめんなさい」

チーター「謝ることはない。あの時見つけてくれて、お母さんを呼んでくれたおかげで、俺は今こうして元気でいられるんだぞ」

仔象「…あのね、あの時ね、すごくびっくりしたの。お水を飲みに行ったらね、お兄ちゃんがワニさんと喧嘩しててね」

チーター「驚かせたよな、ごめんな」

仔象「ううん!ガブってしたワニさんが悪いもの!お兄ちゃんは悪くないよ」

チーター「そうか…」

仔象「へへへ。あのね、ママはね、とっても強いから、ワニさんもやっつけちゃうんだ!」

チーター「ああ、すごかったな。かっこよかった」

仔象「へへへー。えっとね、だからね、お兄ちゃんはあんよを怪我しちゃったけどね、僕はお兄ちゃんに会えたからね、嬉しいんだ」

チーター「…そうか。俺も、会えて嬉しい。助けてくれてありがとうな」

仔象「へへへへ」

チーター「さ…今日はもう遅い。一緒に眠ろう」

仔象「うん!おやすみなさい、お兄ちゃん」

チーター「ああ、おやすみ」


ライオン「おい、お前」

チーター「…なんすか」

ライオン「最近、お前は狩りをしていないらしいな」

チーター「…前脚、怪我してるんで」

ライオン「ほう、それで狩りができないと」

チーター「それがなんすか」

ライオン「それで、草や魚ばかり食べていると」

チーター「…何が言いたいんすか」

ライオン「その前脚、もう治っとるんだろう」

チーター「…まだ、痛むんで」

ライオン「質問を変えようか。お前、食い物に感情移入しているな」

チーター「…は?」

ライオン「あの仔象のところに入り浸っとるらしいじゃないか」

チーター「それと、これは別に」

ライオン「命を助けられたからか?父性にでも目覚めたか?情が芽生えたか?」

チーター「あの子は」

ライオン「何にせよ、象という生き物は、私たちにとっての食い物にしか過ぎん。まあ、彼らをわざわざ襲って食おうなんて思わないが。それでも間違いなく、あれは食い物だ」

チーター「…だから何だって言うんすか」

ライオン「命を摂る事を、躊躇っとるんだろう」

チーター「そ、れは」

ライオン「まだお前も若い。本能に従うだけの大人になりきれんのもわかる。それでも腹は減る、食わねば死ぬ」

チーター「だから、俺は」

ライオン「草と魚で腹を満たしとるんだろう。ではなぜ、魚は食う。同じ命だろう」

チーター「…魚、とは…会話できないから」

ライオン「罪悪感が薄いと。だから食える」

チーター「し、仕方ないだろう。草をいくら食っても…」

ライオン「悪いなんて言わない。ただな、食っていい命とそうでない命を、お前が決めている事が問題なんだ」

チーター「なんだよ、それ」

ライオン「…警告はしたぞ。あとはしっかり食って、その怪我を治す事だな。まあ、治っていなければの話だが」

チーター「おい!待てよ!…なんだよ、くそ…」


チーター「…なんだ、象の…群れ?いつもと空気が違う…」

仔象「ママ…ママ…起きて、ねえ、ママ…」

象「坊や…ごめんね…」

チーター「何を取り囲んでんだ…?」

象たち「坊や、もうそっとしてあげるんだ」「ママはもう…」「ちくしょう、人間のやつらめ…」

仔象「やだやだやだやだ!!ママ、ママ、ママ…」

チーター「おい…これ…どうしたんだよ…」

仔象「あ…お兄ちゃん…」

チーター「おい…おい…死ぬなよ…息子置いて死んだらだめだろ…」

象「あら…こんにちは…今日も…来てくれたのね…」

チーター「どうしたんだよ…何が…」

象たち「人間たちが坊やを狙って」「それで助けに行ったんだけど、彼女だけ撃たれてしまって…」「残念だけどもう…」

象「だからね…お願い。私を…食べて」

チーター「な、にいってんだ…」

象「私の…願いは…あの子が…青い空の下で…豊かな大地の上で…ご飯をいっぱい食べて…仲間に囲まれて…元気に生きて…幸せに…暮らす事…」

チーター「だからあなたは生きなきゃいけねぇだろ!死ぬなよ…」

象「きっと…あなたのお母様も…あなたに…同じことを…願っているはずよ…」

チーター「何言って…」

象「だから…あなたは…私を…お肉をいっぱい食べて…しっかり生きなさい。あなたには…生きる資格と、義務があるわ…」

チーター「生きる…資格…」

象「そして…あなたが私の肉を食い破り…ハイエナや…鳥達が…私を食べて、命を繋ぐ…」

仔象「お兄ちゃん、ママを食べちゃうの?いやだよ、だめだよ、そんなことしないよね、やめて、やだやだやだ」

象「坊や…ママは…鳥さんや…他の動物さんになって…色んなところから…あなたを見守っているわ…だから、大丈夫…」

チーター「俺の…義務…」

象「さあ…私を食べて…私の義務を果たさせて…。お願いよ…」

仔象「ママ!ママ!目を開けて、ママ!」

チーター「…俺はまた…あなたに助けられるんすね…」

仔象「お兄ちゃん…?」

チーター「あなたの命…いただきます」

象「…ありがとう…。坊や…お兄ちゃんの事…嫌いになったら…だめ…よ…」

仔象「あ…あ…やめてやめてやめて!来ないで、お兄ちゃんやめてよ!」


ライオン「すっかり元気になったな」

チーター「…なんすか」

ライオン「ちゃんと肉食ってんだな」

チーター「まあ…」

ライオン「お前はチーターに生まれた。だから肉を食う、それだけだ」

チーター「…うす」

ライオン「だがな、食っていい命なんてない。だが、食わずに死ぬべき命なんてのもない」

チーター「…俺には、食ってでも…生きる資格と義務がある」

ライオン「お、わかってんじゃねえか。そうだ、だからお前は命を摂る覚悟を持って、しっかり生きろ」

チーター「…うす」

ライオン「それじゃあな、しっかり食えよ」

チーター「…なんなんだ、あのおっさん…」


象たち「さあ、そろそろ出発するよ」「次の場所はもっと草があるらしいわよ」「子供たち〜はぐれるんじゃないぞ〜」

仔象「はーい。…ママ、いってきます。きっと、見守ってくれてるんだよね。僕、いっぱい食べて、いっぱい大きくなるから。ちゃんと、みててね」


チーター「…ふぁ、よく寝た。さて…今日も食うか…」


シティポップ
題名:シティポップキャンディは眠らない 作者:出崎真純/オニオン侍
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※本作における著作権管理・利用について 本作は著作権フリーであり、サークル活動、 無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。 また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、 必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。
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時間:20分~30分
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※配役(男女比:2:2 ※兼役含み)
△男性
名前:イヌ 年齢:3歳 概要:「ワタシ」が幼少期に飼っていた雄の柴犬。実際は心優しい青年。
名前:マスター(クマ)/ウサギ 年齢:30歳/45歳 概要:優しい中年マスター/街路樹の脇にあるダンボールで暮らす薄汚れた白兎。実際は野生の中年男性。

△女性
名前:私/ワタシ 年齢:22歳 概要:都会のスマートな恋愛に憧れているOL。北海道出身の田舎者。 名前:ネコ 年齢:23歳 概要:夜の蝶の猫。実際はセクキャバ嬢。とても口が悪い。
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※本文
私「だからですね、私は、こう、白馬の王子様みたいにですねぇ」

   マスター「ちょっと、呑みすぎだよ」

   私「えぇ? 可愛すぎ? うふふ、ふふふふ。 デュフフフフ!」
 
マスター「怖い怖い」

   私「マスターおかわり! シティポップキャンディ!」
 
マスター「このカクテルってね、ナンパ男が、女の子に呑ませるような強いものなんだよ?」

私「えぇ!? 私のことナンパしたいんですか!?」

   マスター「そうじゃなくて」

   私「駄目ですよ、マスターは奥さんが居るもの。それに、熊みたいに大きいもの」
 
マスター「僕、どうして勝手に振られているのだろう」
 
私「今日くらい酔ったっていいじゃないですか……今日くらい」
 
マスター「酷い男だったものね……」
 
私「田舎者だってね、夢くらい見るんですよ。都会の、こう、素敵な夢くらい」

   マスター「……この一杯で最後にするんだよ」

   私「いただきまぁす! ごっつぁんです!」
 
マスター「こらこら、一気に飲んだら」

   私「あれぇ? マスター、どうして急にグニャグニャしてるの? 都会の流行りってやつ?」
 
マスター「こりゃあ重症だ……ああ、いらっしゃい。お好きな席に――」

   私「大体さ、田舎娘にだって、節操くらいあるのにさ、あの男は」
 
マスター「ちょっと――ちゃん――そろそ――」
 
私「え? なぁに、マスター」

   マスター「だから――今日はも――」
 
私「なあに!」
 
クマ「――だから、そろそろ帰ったらどうだい?」
 
ワタシ「あら。ワタシそんなに酔ってないよ、クマさん」
 
クマ「クマじゃないよ」

   ワタシ「クマにしか見えないよ。北海道で見たことあるもの。そっくり!」

   クマ「この子目が据わってるよ……完全にスイッチ入っちゃった」
 
イヌ「マスター、ウィスキー、ロックで」

   ワタシ「あれ? イヌ?」
 
イヌ「は、はい?」
 
クマ「他のお客さんに絡まないの」

   ワタシ「イヌじゃない! ちょっと、どうして東京に居るの!」
 
イヌ「人違いだと思いますが……?」

   ワタシ「人違いな訳ないわ! 貴方、柴犬だし、それに、赤い首輪も……」
 
イヌ「これはネクタイですよ」
 
ワタシ「あとこの目。見せて、ほら」

   イヌ「いや! ち、近いです!」
 
ワタシ「やっぱり……イヌ!」
 
イヌ「うわぁ!」
 
クマ「他のお客さん抱きしめないの!」

   ワタシ「イヌ! うりうり! ここか! ここがいいのか!」
 
イヌ「首! やめてください! 首!」

   ワタシ「どうして勝手に死んだりしたの、イヌ。ずっと一緒って約束したじゃない……」

   イヌ「……あぁ、いや、その」

   クマ「そろそろ、タクシー呼ぼうか」
 
ワタシ「やだ! この子、目を離すと何処かに行くもの!」
 
クマ「お客さん、すいません。普段はこんな失礼なことをしない子なんですが」
 
イヌ「いいんです。何かあったのでしょう? 目が少し、腫れていますし」
 
クマ「ええ、まあ」
 
イヌ「この方、送っていきましょうか?」

   クマ「いやぁ、そんなことまで」

   ワタシ「イヌぅ……」

   イヌ「こんな様子ですし……」
 
クマ「……すいません、いや、ほんと」

ワタシ「ほら、イヌ、おいで」

   イヌ「どうしてネクタイの先を摘んでいるのですか」

   ワタシ「いつもこうしていたじゃないの」

   イヌ「いや、ですから僕は……」
 
ワタシ「ほら、見てご覧。あんな大きな建物、地元にはなかったでしょう? 新宿センタービルっていうの」
 
イヌ「えぇ、何度か行ったことがあります」

   ワタシ「えぇ! イヌが?」
 
イヌ「はい」

   ワタシ「はっはっは! うっそだぁ!」

   イヌ「本当ですよ」
 
ワタシ「犬じゃん!」

   イヌ「犬じゃないです」
 
ワタシ「それにしても、久しぶりだよね」

   イヌ「なんにも聞いていないですね……」

   ワタシ「イヌが死んで、十二年くらい経った頃かな。大学を卒業して、すぐ上京したんだ」
 
イヌ「どうして、わざわざ東京に?」
 
ワタシ「どうしてって、それは……」

   イヌ「えぇ」
 
ワタシ「……なんか、お洒落じゃん?」
 
イヌ「田舎者丸出しですね」

   ワタシ「うるさい!――あ、電柱だ。ほら、イヌ」
 
イヌ「なんですか?」
 
ワタシ「おしっこしておいで」

   イヌ「しませんよ!」
 
ワタシ「え!? 何処かでしてきたの?」

   イヌ「いや、それはまあ……」
 
ワタシ「なに、誰と散歩したの! 浮気?」

   イヌ「一人でトイレでしたんですよ!」

   ワタシ「と、トイレ! トイレで出来るの!? うちの犬すげぇ!」

   イヌ「いや、だから……あー痛い。周りの目線が痛い」
 
ワタシ「よーしよしよし!」

   イヌ「うわっ! 撫でないで下さいよ!」
 
ワタシ「偉いね、イヌ」

   イヌ「……なんてずるい顔してるんですか。言い返せないですよ」
 
ワタシ「なに?」

   イヌ「なんでもないです。それより、イヌってなんですか?」
 
ワタシ「イヌはイヌでしょ? 私の犬は、イヌって名前じゃないの」
 
イヌ「ん、ん? んー、ああ、そういう」

   ワタシ「あ! ウサギだ!」

   イヌ「ウサギ? ちょっと、引っ張らないで! 首が!」 

* 

ワタシ「チッチッチ。ほら、おいで! チッチッチ」
 
ウサギ「なんだよお前ら」
 
イヌ「ちょっと、まずいですって……」

   ワタシ「こんな所で何をしているの、ウサギさん。ボロボロじゃない」
 
ウサギ「ウサギじゃないわ!」

   ワタシ「ウサギじゃないの!」

   ウサギ「もしかして国の人間か? この公園は俺の家だ! 出て行かんぞ!」
 
イヌ「ごりごりの野生のオジさんじゃないですか!」
 
ワタシ「国? ああ、保健所の人なんかじゃないよ、ウサギさん」
 
ウサギ「だからウサギじゃねぇって」
 
ワタシ「ほらイヌ! ちゃんと言って、私達は善良な人と犬だって」
 
イヌ「ネクタイ引っ張らないで下さいよ」

   ウサギ「お、俺は何のプレイを見せられているんだ……?」
 
イヌ「そういうんじゃないです!」
 
ウサギ「どう転んでもそういうのにしかみえねぇよ」
 
ワタシ「まだ春先だよ? こんな寒空で寝てたら、風邪引くと思うよ」

   ウサギ「仕方ねぇだろ、人を待ってんだ」

   ワタシ「飼い主? 可哀想に、誰かに捨てられたのね」

   ウサギ「いや、俺はそういうプレイはしねぇ」
 
イヌ「こっち見ながら言わないで下さいよ!」
 
ワタシ「うちにおいで、暖かいから」

   ウサギ「行きます」
 
イヌ「こら!」

   ウサギ「冗談だよ馬鹿野郎。なんか飯もってねぇか。腹減ってんだよ」

   ワタシ「はい、お食べ」

   ウサギ「おう、なんだこれ……キャベツの芯じゃねぇか!」
 
ワタシ「好きでしょう?」
 
ウサギ「ぐえっ! こんなもん口に突っ込むんじゃ――うめぇ! 極限状態で食べるキャベツの芯うめぇ!」
 
ワタシ「よかったね」
 
イヌ「馬鹿だ、馬鹿が二人居る」
 
ウサギ「もっとくれ!」

   ワタシ「ちょっと待ってね」
 
イヌ「行きますよ! ほら!」



ワタシ「はぁ、はぁ……どうしたの、突然走り出して」

   イヌ「どうしたじゃないですよ! なに野生のオジさん餌付けしているんですか!」
 
ワタシ「なに言ってるの、可愛いウサギだったじゃない」

   イヌ「もしかして、目がないんですか……?」
 
ネコ「お兄さぁん、うち寄ってかない?」

   イヌ「え? いえ、その、あの」

   ワタシ「なになに?」
 
ネコ「チッ、彼女持ちかよ。話しかけて損した。さっさとどっかいけよ」

   ワタシ「ネコだ! ネコが黒いドレス被ってる! 可愛い! ネコ被りだ!」

   ネコ「はぁ? 誰がネコ被りだ芋女!」

   イヌ「あながち間違いじゃない……」
 
ネコ「おいヒョロガリ! 聞こえてんぞ! 喧嘩売ってんのかオラ!」
 
イヌ「申し訳ございませんでした」
 
ワタシ「ヒョロガリじゃないもの! イヌだもの!」

   ネコ「い、犬? てか、あんた、なんでこいつのネクタイを引っ張ってんの?」 ワタシ「だって、犬だし」
 
ネコ「あ、あぁ、そういう……」
 
イヌ「こっち見て言わないで下さいよ!」

   ワタシ「ネコちゃん、こんな街中でなにをしているの?」
 
ネコ「なにって、仕事に決まってるでしょ。客引き」

   ワタシ「猫カフェかな?」
 
ネコ「違うし。セクキャバよ、セクキャバ」

   ワタシ「セクキャバって?」

   イヌ「し、知りませんよ。ええ、本当に」

   ネコ「まあ、お触り出来るキャバクラってとこ」   

ワタシ「猫達と、にゃんにゃん出来るってこと?」
 
ネコ「なにおっさんみたいなことを言っているのよ。でもまあ、そうね」
 
ワタシ「行きます!」
 
イヌ「行きません!」
 
ネコ「どっちだよ!」
 
ワタシ「なあに、イヌ。嫉妬してるの?」

   イヌ「してません」
 
ネコ「……ぷっ。あはは。ほんと、なんなのよあんたら」
 
ワタシ「笑ってる……凄い可愛い」
 
ネコ「あんたの主人、目つきが怖いんだけど」   

イヌ「すいません」
 
ネコ「はあ……そろそろ休憩なの。路地に行くけど、あんたら、何か飲む?」

   ワタシ「呑む!」
 
イヌ「はあ……ノンアルコールでお願いします」



ネコ「――そう。災難ね、あんた」
 
イヌ「まあ、ええ。あ、コーヒーご馳走様です」
 
ワタシ「イヌ、見て! 凄いよ! カバが居る! あ、シマウマも!」
 
イヌ「遠くに行ったら駄目ですよー!」
 
ネコ「ここまで仕上がってる酔っ払い、はじめて見たわ。なに呑んだの?」
 
イヌ「最後の一杯しか見ていないですが、シティポップキャンディでした」
 
ネコ「うわぁ。ちょっと芋女、何杯いったのよ」
 
ワタシ「私? えっと、1、2、3、456789――」
 
ネコ「あーもういいもういい。化物ね」

   イヌ「……こういう仕事、長いんですか?」
 
ネコ「なによ急に」
 
イヌ「いえ、その。なんとなく」

   ネコ「――18からだから、もう5年くらいになるかしら」
 
イヌ「大変ですね」
 
ネコ「あんたになにが分かるのよ」
 
イヌ「あ、すいません……」
 
ネコ「別に……まあ、でも、正解よ。結構大変な仕事。上下関係は厳しいし、客はろくでもないし、男との出会いもクソ食らえって感じだしね」
 
イヌ「そうですか……」

   ネコ「……はあ。なに、なんなの?」

   イヌ「え?」
 
ネコ「言いたいことがあるなら言いなさいよ。顔に書いてる」

イヌ「あー……えっと、そんなに大変なら、どうして五年も?」
 
ネコ「美人だから」

イヌ「うわぁ……」
 
ネコ「はぁ!?」
 
イヌ「うわぁ!」
 
ネコ「ちょっと芋女。私、美人?」

ワタシ「とっても可愛い! 連れて帰りたい!」
 
ネコ「鏡の横に置きたいわね、この子」
 
イヌ「早く酔いが覚めるといいのですが」
 
ネコ「――まあ、色々あるのよ。こういう仕事をしている人は、誰だってね。…頼れる身内なんて、居ないしさ」
 
イヌ「すいません、僕――」
 
ネコ「いいのいいの。そういうつもりで言ったんじゃないから」
 
ワタシ「チッチッチッチッ。おいで、チッチッチ」
 
イヌ「なんていえばいいか分かりませんが……応援しています」
 
ウサギ「キャベツの芯うめぇ……」
 
ネコ「あはは、ありがとう」
 
ワタシ「よしよし」
 
イヌ「ちょっとなにやってるんですか! うわ、野生のオジさんだ!」
 
ウサギ「ちげぇよウサギだよ。いや人間だよ馬鹿野郎」
 
ワタシ「そこでね、ゴミ箱を漁っていたから、つい」
 
イヌ「つい、じゃないですよ!」
 
ネコ「……うそ、パパ?」
 
ウサギ「あ……なんで、お前、ここに……」
 
ワタシ「え……猫じゃなくて、ウサギの子だったの?」
 
イヌ「しっ」
 
ネコ「――へえ、その様子だと、まだ馬鹿みたいにホームレスやってるんだ」
 
ウサギ「……その、いや」
 
ネコ「そんな汚ったない格好して、情けなくないの? 臭いんだけど」
 
ウサギ「お、お前は元気そうだな」
 
ネコ「うるさい! 何でまだ生きてるんだよ! お前なんか、お前なんかっ――」
 
ワタシ「やめなさい」
 
ネコ「っ! くそっ……」
 
ウサギ「あっ、おい!」
 
ワタシ「イヌ、追いかけて!」
 
イヌ「は、はい!」
 
ウサギ「――ごめんな……」



ウサギ「――キャベ芯、うめぇな」
 
ワタシ「一杯食べて。やっぱり、お家の公園だと落ち着くみたいだね」
 
ウサギ「おう……」
 
ワタシ「ネコちゃん、娘だったんだ」
 
ウサギ「ああ、そうだ」
 
ワタシ「どうして別々に暮らしているの?」
 
ウサギ「猫と兎じゃ、合わないだろ」
 
ワタシ「ああー確かに!」
 
ウサギ「納得すんな馬鹿野郎。冗談だよ」
 
ワタシ「……でも、それってとても、寂しい事だと思う」
 
ウサギ「…人を待ってるんだよ、俺」
 
ワタシ「さっきも言ってたね。誰を――」
 
ネコ「――離せって、くそ! いかねぇっつってんだろ!」
 
イヌ「すいません!」
 
ネコ「謝るなら離せっつーの!」
 
ウサギ「お前……」
 
ネコ「あ……」
 
ウサギ「……その、あれだ。久しぶ――」
 
ネコ「いい加減にしろよ!いつまでも死んだママを待ちやがって!」
 
ワタシ「え……?」
 
ネコ「ウジウジしてさ!来るわけないじゃん、死んだんだから!もう何年経ったと思ってんの?!もう居ないんだよ、どこにも!あんたの家族は私だけなんだよ!なのに…なんで、死んだ人のこと、ばっかなわけ?!」
 
ウサギ「…すまん」
 
ネコ「…はぁ?なに、今更…謝ってんの」
 
ウサギ「……その、なんだ。とりあえず、座るか?」
 
ネコ「ダンボールじゃん」
 
ウサギ「嫌か」
 
ネコ「……別に」
 
ワタシ「…行こっか」
 
イヌ「はい」



 ワタシ「ウサギさんとネコちゃん、上手くいくかな?」
 
イヌ「きっと大丈夫ですよ。きっと」
 
ワタシ「イヌ、見てご覧。夜中なのに、街がこんなに明るいよ」
 
イヌ「東京ですからね」
 
ワタシ「人も一杯いるね」
 
イヌ「新宿ですから」
 
ワタシ「なんだか、宝石みたいだね」
 
イヌ「そうですね」
 
ワタシ「あのね、イヌ」
 
イヌ「なんですか?」
 
ワタシ「イヌが死んだ後ね……ワタシ、なんとなく、待ってたんだ。ウサギさんみたいに」
 
イヌ「そうなんですか?」
 
ワタシ「多分、受け入れられなかったんだと思う。だって、まだ三歳だったんだよ、君。早すぎるよ」
 
イヌ「そうですね……」
 
ワタシ「覚えてる? ワタシが子供の頃、野良犬に襲われた時さ、君、家から走って助けに来てくれたんだよ。まあでも結局、私が木の棒で追い払ったんだよね」
 
イヌ「ふふ、なんですかそれ」
 
ワタシ「あはは、笑っちゃうよね。――でもね、あの時の君、かっこよかったなぁ。白馬の王子様って、こういう感じなんだろうなって、そう思ったんだ。――いてて!」
 
イヌ「大丈夫ですか?」
 
ワタシ「頭痛い……なにこれ」
 
イヌ「呑み過ぎですよ、やっと気づきましたか。顔の赤みも随分引きましたね」
 
ワタシ「はぁ……二日酔い確定だなぁ」
 
イヌ「明日はお休みですか?」
 
ワタシ「うん、お休み」
 
イヌ「なら、ゆっくり休むといいですよ」
 
ワタシ「そうだねぇ……ねえ、イヌ」
 
イヌ「なんですか?」
 
ワタシ「君、死んだんだよね、やっぱり」
 
イヌ「……そうですよ、死にました」
 
ワタシ「そっか……そうだよね。あはは、うん、知ってた」
 
イヌ「なんですか、急に」
 
ワタシ「多分、もうすぐお別れなんだね」
 
イヌ「……ええ」

ワタシ「今日は、会いにきてくれてありがとう。変な男に振り回されてさ、ちょっと疲れてたんだ。もうやだなーって。だから、助けにきてくれたんだよね? あの時みたいに」
 
イヌ「元気になりましたか?」
 
ワタシ「うんっ。もう、超元気。さっさと忘れて、また新しい恋でも探すさ!」
 
イヌ「……僕、君の事、忘れませんから」
 
ワタシ「ありがとう。ワタシも、イヌの事、忘れ、な――」
 
イヌ「あれ、ちょっと! しっかりして下さい!」
 
ワタシ「ねむ、い――」
 
イヌ『ばいばい』

私「うん、ばいばい――」



私「……あ」
 
マスター「おはよう」
 
私「ぎゃあああああ!」
 
マスター「わぁあああああ!」

私「な、なんですか! どこですかここは!」
 
マスター「し、心臓に悪い……。ここは店のバックヤードだよ」
 
私「えっと、私……」
 
マスター「昨日こと、覚えていないのかい? 他のお客さんを引っ張ってお店を飛び出して、その後、担がれて帰ってきたんだよ」
 
私「誰ですか、その野蛮な女は」
 
マスター「君だよ……。あのお客さん、凄く良い人でね。女の子を連れ帰る訳にも行かないからって、わざわざここに相談しにきてくれたんだ。で、とりあえず店のソファにって流れで」
 
私「す、すいませんでした!」
 
マスター「いいのいいの。あんなに呑むなんて、よっぽど堪えていたんだろうね」
 
私「いやぁ、ははは……」
 
マスター「お水飲む?」

私「い、頂きます……」
 
マスター「ああ、そうだ。お昼に様子を見に来るって言っていたから、あとでご挨拶しないとね」
 
私「分かりました……」
 
マスター「……良い男だよ、彼」
 
私「へ、へぇ」
 
マスター「イケメンだよ、イケメン」 私「ほー……!」
 
マスター「帰り際、君、彼の背中に吐いたらしいよ」
 
私「うわぁ……もう駄目だ、おしまいだ! 現実逃避したい……」
 
マスター「ははは、しっかり感謝しないとね」

私「……あの、マスター」
 
マスター「なんだい?」
 
私「迎え酒って、知っていますか?」

~完~



◎ご紹介
▼金沢学院大学演劇部の皆様が演じてくださいました!とっても嬉しいです、ありがとうございます~!
↓こちらからご覧いただけます!



ボイスドラマサークル烙印物語projectの皆様が演じてくださいました!本当にありがとうございます~!!嬉しい!!
↓いただいた画録をYouTubeの方に投稿させていただきましたので、ぜひこちらからご覧ください!

▼雨ヤドリの皆様がYouTubeにて演じてくださいました!ありがとうございます〜!私もリアタイ視聴させていただきまして、とても感動しました!
↓アーカイブはこちら♪

外見
題名:外見は説得力!!

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、

無料放送、商業目的問わず

ご自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても

報告は不要であり、必要に応じて

改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:5分弱

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※配役(男女比:4:0)


A:今日は語りたい気分

B:今日も振り回され気味

C:今日も絶好調

D:今日もこの人らは楽しそうやね

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本文


A「外見は説得力だ」

B「聞こう」

A「BAさんがとてもいい例だ」

C「びーえーさん?」

A「ビューティーアドバイザー(流暢)さん」

B「お化粧品売り場の」

A「そ。美人さんばかりだ。それはなぜか」

C「はい!店長の趣味!」

D「それもあるかもしれんね」

A「NOとは言い切れないが」

B「いいな…化粧品販売店の店長」

A「化粧品を求める、お客様の気持ちになってみる」

D「美しくなりたいわぁ」

A「人それぞれだろうが、多くの方はそれを望んでいる」

B「うちの母ちゃんも、シミ消したいとか、シワなくしたいとかしょっちゅう言ってるな…」

A「このファンデーションなら、そんなお悩みも一気に解決!」

C「わ、びっくりした。なになに、急にセールスのおばちゃんみたいな声出して」

D「あらぁ〜!本当かしら!ここと、ここと、ここのシミ・シワが嫌なのよ〜」

A「綺麗になりますよ〜!いかがですか〜」

D「あらぁ〜!!でも、あなた、シミもシワもすごいじゃない」

B「目こわ」

A「お、お客様〜?」

D「このファンデが本当に効くなら、あなた、使ってるわよね〜?」

C「あらやだ!偶然〜!なになに、どうしたのよ〜」

B「なんかきた」

D「あら偶然!ちょっと見てよ、この人のお顔!」

A「あ、あの」

C「やーだ、全部丸出しじゃない!シミちゃんシワちゃん、暴れ放題よ〜」

D「やだやだ、大したことないお化粧品に決まってるわぁ」

C「そうよ!そんなことよりお茶して帰りましょっ」

A「と、なるわけだ」

B「なるほど…」

A「綺麗になれる化粧品を売るのなら、実際に使用しているであろう販売員さんは綺麗でなくてはならない」

D「自社製品はお安く買えるらしいしなぁ」

C「おブスからは買わなくてよ!」

A「実際の化粧品の効能も大切だが、売り手の外見はお客様の購買意欲に大きく影響する」

B「あれ…なんかの講座に来てたっけ」

A「それを逆手にとるとだ。外見の良さを活かせば、粗悪な化粧品も売る事ができる」

C「じゃあ、このおいしくなかった菓子パン売り捌いてくる」

D「思い立ったら即行動やねえ」

A「テレビのCMがいい例だ」

B(…あれ、もしかして)

A「イケメンの俳優さんが、ヘアワックスの宣伝をしていたとしよう」

D「ツヤで差をつけろ」

A「実際、使っているかは別としてだ。その俳優さんの髪型がバッチリ決まっていて、さらに顔もいいときている」

D「思わず試さんと買ってしまうんよねえ」

A「これを使えば俺もイケメンになれるんじゃ、と思わせればいい。効能は別としてだ」

B「…今日の髪型が、こう…芸術的というか、前衛的なのと関係してる?」

A「…ああ」

B「カバンからのぞいてる山盛りの小箱も関係してる?」

A「……ああ」

D「効果はどうやったん」

A「ご覧の通りだな。さらに言えばかなりにおうぞ」

B「ごめん、ずっと聞こうか悩んでた…このにおい、何って」

A「まあ、つまるところ、外見は良くも悪くも説得力になるぞって事だな」

C「女子に売れたー!」

B「…これも?」

A「ああ、顔面の良さをフルに活かした良い例だ」

D「グァバソーダパンなんてよく売り捌けたなあ」

B「しかも食いかけ」

A「それはむしろ付加価値だ。イケメンの食いかけのパンなんて、プレミアつくぞ」

C「んで、なんの話してたっけ!」

B「物の価値はしっかり見極めなきゃね、って事?」

A「………………ああ」





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