オニオン侍の玉ねぎ亭

TRPGと声劇が大好きなオニオン侍のブログです!

カテゴリ:声劇台本 > 3人用

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題名:結婚する大切な君へ


作者:オニオン侍

人数:3人(0:3)


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【本作における著作権管理・利用について】

本作は著作権フリーであり、サークル活動、

無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます!)

(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます!)

(配信などございましたらぜひお教えください!)


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時間:20分

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【配役】

○女性


名前:望月 ましろ(もちづき ましろ)

年齢:20代~

概要:結婚するんだって!



名前:冬原 さくら(ふゆはら さくら)

年齢:20代~

概要:嬉しいような寂しいような



名前:松前 よつば(まつまえ よつば)

年齢:20代~

概要:お祝いしたいような阻止したいような


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望月(♀):

冬原(♀):

松前(♀):

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本文




望月「2人共久しぶり~!」


冬原「久しぶりー!元気そうやね!」


松前「元気元気ー!会えて嬉しいー!!」


望月「今日の為に、休みをもぎ取りました」


冬原「さっすが!私も前倒しにやってきたわー」


松前「私は明日も休みにしちゃったー!」


望月「うあああ羨ましいいい」


松前「おーっほっほっほ!」


冬原「その発想はなかった……天才やわ……」


望月「今度会う時絶対そうする」


松前「さーさ、持ってきたもの開けよ開けよ~」


冬原「ふっふっふ、おすすめのものいっぱい持ってきた!」


望月「あ゛ーーー!!それ絶対うまいやつ!!」


冬原「せやろせやろ~」


松前「さすがだねー!わかってるぅ」


望月「私だって負けないし!!俺のターン!ドロー!チーズの味噌漬け!」


冬原「ぐあああああ」


松前「なんのこれしき!俺のターン!ドロー!レモンワッフル!」


冬原「ぐあああああ」


松前「ふはははは!!!うわ、美味しいサクサク」


望月「はーーー開始早々楽しすぎるし、腹痛い」


冬原「ほんそれな!というか子供の頃からなんも変わらなさすぎじゃない?!」


松前「ほんと!20年以上変わらないってすごい事よ!」


望月「しわしわになってもこんな感じなのか……」


冬原「それはちょっとアレだな!もう少し落ち着きたいわな!」


松前「そうよ!あたしたち、淑女よ!レディよ!」


望月「ポーズどうなってんの、ひぃ、笑いすぎて顔面痛い」


冬原「そうですわね!あたくしたち、立派なレディでしたわ!」


松前「レディなので踊ります」


冬原「ずんちゃずんちゃ」


望月「待って、ひぃ、ツッコミが不在すぎる」


松前「フロア沸かせるわよ!」


冬原「FOOOOOO!!」


望月「げほげほっ、笑い死にする、まって、ほんと」


松前「お水のんでお水!」


冬原「そしてワッフル食べて!」


望月「よつばさんありがと……そしてお前は喉をつまらそうとすな!」


冬原「そんな!あたいはましろちゃんのためを思って!」


松前「そうよ!さっくーは良い子なのよ!」


望月「えっあっ、ごめ」


冬原「ちっ、バレちゃあしょがない!おらー!口の水分もってかれろー!」


望月「ちょっ、それはあかん!それはあかんよ!」


松前「なるほど、そのためのバゲットだったのね」


冬原「いやあ、いいところにあったから」


望月「うえーん、おいしいー、けどパサパサになった」


冬原「あらあら、かわいそげに。はい、お酒」


望月「お前のせいだからな?!あとお水がいいです!」


松前「あたいのお酒が飲めないっての?!」


冬原「よつばさんのお酒を断るたぁ、いい度胸してるじゃぁないか!」


望月「ねぇ酔ってる?!酔ってるの?!」


松前「あははー、楽しいねぇ。冬原さんや」


冬原「わははー、楽しいねぇ。松前さんや」


望月「ええ……いや、うん、楽しいんだよなぁ、ちくしょう!」


松前「あはは、ごめんごめん!はー、こんなノリ許してくれるの2人だけだよー」


冬原「わかる。というか2人の前でしかやらんけど!」


望月「他の人にやるなよ?!特にお前ー!」


冬原「なんですかな、望月さんや」


望月「自由すぎん?」


松前「フリーーーーーーダム!」


望月「今度はなに?!」


松前「大人のしがらみを忘れて今日ははじけましょう、の合図です」


冬原「フリーーーダム!」


望月「順応性どうなってんの?!」


松前「あっはっはー、お酒が進むなぁ」


冬原「このチーズ美味しすぎる、どこで買ったん」


望月「へ?!え、あー、物産展やっててさ」


冬原「ははーん、さてはほっかいどぅーやな?」


望月「言い方!そうだけど!」


松前「でっかいどぅーはいいぞ、試される大地だからな」


望月「どういう理由?!いいとこだけど!」


冬原「はー、試されてるわ、これは」


望月「どういう味?!」


松前「望月さんや、まぁまぁ落ち着いて」


望月「わ!なにこれ!めちゃくちゃ綺麗なお酒!」


冬原「わ!なにそれ!すごい!」


松前「ふっふっふ。これはですね、自分へのご褒美でして」


望月「え!そうなの!?わけてもらっていいの?!」


松前「もちろん!ちょっとね、頑張ったなぁと思いましてね」


冬原「よつばさんはいつだって偉いので、毎日ご褒美もらっていいよ!」


望月「いや、ほんそれな」


松前「まぁまぁ、2人もどーぞどーぞ!一緒に幸せを分かちあっておくれ」


冬原「わーい!ありがとう!あ、じゃあ私も」


望月「え、え、なになに」


冬原「じゃーん!私はいただきものだけど、めっちゃ並ぶお店のチーズケーキ!」


松前「え!!あのお店?!すご」


望月「チーズ好きにはたまらんやつじゃん……」


冬原「みんなでわーけーよー!」


望月「ええん、ありがとー!え、というか、すごいお祝いムードになってきたね」


松前「ひゃっふー!祝え祝えー!」


冬原「いええええい!みんな偉い!おめでとう!最高!」


望月「い、いええい」


松前「あれ、どしたのましろちゃん」


冬原「どしたん、どしたん、ぽんぽんいたぁなったか?」


望月「いや!ごめん、ぽんぽんは無事です」


冬原「そいつぁ何よりだぜ」


松前「何か言いたい事あるんでしょ!お姉さんにはわかっちゃうんだぞ~~」


望月「う、うん」


冬原「えー!なになになになになに」


松前「わくわく」


望月「え、えっと、いや、今日ね、どこかでお伝えしようとは思ってたんだけど……」


松前「はっ、もしや」


冬原「もしやもしや~~」


望月「今度のね、春になんだけど……その、お付き合いしてる方と……結婚、します!」


松前・冬原「「おおおおめでとおおおおおお!」」


望月「あ、ありがとー!」


松前・冬原「「ふおおおおおおおおおおおおおおおめでとおおおおおお!!」」


望月「ちょ、テンションたかっ!!」


松前・冬原「「うわああああんおめでとおおおおおおめでとおおおおおお!

」」


望月「ステイ!ステイ!」


松前「こんなん落ち着いていられるかってーの!ふううううううう!」


冬原「宴じゃ宴じゃーーーーい!!」


望月「す、座れ!お座りお座り!」


松前「あら、あたくしに向かってそんなわんちゃんみたいに言うなんて」


冬原「いつのまにそんな偉くなったのかしら」


望月「って言いながらも座る2人が好きよ……」


松前「おふざけは置いといて、いやほんとにおめでとうね!」


冬原「おめでとうおめでとう!!」


望月「へへ……ありがとう!!2人にはね、真っ先にお伝えしたいなーって」


冬原「わかってるやん」


望月「偉そう過ぎない?!」


松前「さすがあたし達が育てただけあるわね」


望月「育てられたっけ?!……いやわりと育ててもらってるな!ありがとね!」


冬原「お相手はどんな人よ、そんじょそこらの男じゃ、あたい達認めないわよ」


松前「そうよそうよ!どこの馬の骨よ!あたし達の大事なましろちゃんを嫁に出すからには、審査をさせていただく必要があります」


望月「急に事務的になったね?!」


冬原「おうおう、教えてみぃ、どんなあんちゃんじゃい」


望月「えええ……え、っとねぇ……すっごく優しくて、趣味もあうし、頼りになるし……えっと、うん、すごく素敵な人だよ!」


松前「かーーーーーーーーーーーっ!」


冬原「はーーーーーーーーーーーっ!」


松前「聞きました?!冬原どん!」


冬原「しかと聞きやしたぜ、松前どん!」


松前「そして見ました?!冬原殿!」


冬原「しかと見ましたぜ、松前殿!」


松前「まーーー!なーーんて可愛いお顔で話すのよ!ましろちゃん!」


冬原「もうそのお顔が幸せを物語ってるわよ!ましろちゃん!」


松前「会ってもないけど絶対良い人ってわかっちゃったじゃん!ましろちゃん!」


冬原「かーーーーーーーーーーーっ!」


松前「はーーーーーーーーーーーっ!」


望月「2人もまくしたてすぎじゃない?!」


松前「もー、お嫁に出したくなさすぎるから、粗を探してやりたかったのにぃ」


冬原「こりゃ完敗ですわな」


松前「でもそれはそれ、これはこれ。かれぴっぴとテレビ通話させなさい!!」


望月「な、なんで?!」


冬原「会社に入る時もさ、面接ってあるやん?」


望月「あるけど?!」


松前「それ」


望月「それ?!」


冬原「あたい達の大事なましろちゃんをお渡しするんだから!!ツラくらい拝ませなさい!!」


望月「や、やだーーー!!」


松前「反抗期だわ!大変!」


望月「い、いつか会わせるから!」


松前「なるほど、直接殴り込みにいくのね」


冬原「それはありやなぁ」


望月「殴り込みじゃないよ!!穏やかに!穏やかにして!」


松前「まぁ冗談はおいといて」


望月「冗談だったの?!どこから?!どこまで?!」


冬原「いやあ、どんな人かは気になるし心配だけどさ」


松前「ましろちゃんが困るっていうならねぇ」


冬原「ねー。式で会うの楽しみやねぇ」


松前「結婚式!!楽しみだわ!はっ、ウェディングドレス?!それとも白無垢?!」


冬原「うわあああああ悩むうううううどっちも着てくれ頼む!!」


望月「し、式は今の所予定が……」


冬原「なん……だと……?」


松前「ウェディングフォトは……?」


望月「あーーー、お写真だけはね……撮れたらなぁとは思うんだけど」


冬原「友人代表のスピーチは……?」


松前「ブーケトスは……?」


望月「参列する気満々でいてくれてありがとね……?な、なんかごめんね……?」


冬原「しょげ……」


松前「しょも……」


望月「あ、あわわ……」


冬原「まぁ、お2人が幸せならいいか!!式を挙げない分、新婚旅行豪華にしちゃえ!」


松前「世界一周!!」


望月「切り替えすごいね?!あと世界は一周できないよ?!」


冬原「ついていこうかなぁ」


松前「いこういこう!」


望月「新婚旅行に?!まさかの同行?!」


冬原「わは、冗談だよ」


松前「ましろちゃんたら~おほほほ~」


冬原「おほほほほ~」


望月「はぁはぁ……ツッコミ疲れた……」


松前「……うん、おめでとう!本当に、本当におめでとうだね!!」


望月「何急に?!どうしたの」


松前「赤ちゃんだったあなたが結婚かーと思って。しみじみしてる」


望月「もうそれ完全にお母さんの目線だね?!」


冬原「はい!正直に言います。嫌です!!!!」


望月「こっちはこっちで何?!」


冬原「大事なましろちゃんをとられたくありませーーーーん!いやでーーーす!ぴっぴろーー!」


松前「わかる!いやでーーーす!ぴっぴろー!」


望月「ぴっぴろって、んふ、ツボった……ひぃ、ぴっぴろって……」


冬原「でもあなたがより笑顔に、幸せになるので、大人の私は大人しく祝福しまーーす!」


松前「えらーーい!私もしまーーす!」


冬原「えらーーい!」


松前「でもやっぱりいやでーーーす!」


冬原「ほんとそれ~~~!」


望月「落ち着いてって……あれ、な、泣いてる……?」


冬原「な、泣いてませーーん!これはお祝のお酒でーす!」


松前「そうでーす、泣いてなんかやりませーん!」


望月「んもー、明らかに泣いてるよ!はい、ティッシュどーぞ」


冬原「ズビ……ありがと……こんなに優しい子だからかれぴっぴも幸せやな……ズビ……うう、嬉しいのにいやすぎて……」


松前「ズビビ……わかる……複雑すぎる……でもめちゃくちゃおめでとうの気持ち……」


冬原「そうなんよ……助けてくれ……超おめでとう……」


望月「情緒がぐちゃぐちゃすぎる……」


冬原「はぁ……しかし……それにしても……なんてめでたい日なんだ!」


松前「宴じゃ宴じゃーー!!」


望月「だから情緒どうなってんの!」


冬原「入籍したらまた改めてお祝いするから楽しみにしとってね!」


松前「ビッグプロジェクト始動だー!」


冬原「うおー!!」


望月「えへへ、ありがとー!楽しみにしてるね」


冬原「盛大なパーリナイにしたる!」


松前「フロア沸かしてけ~!!」


望月「また踊り出した!!ステイ!ステイ!」


冬原「こんな良い日に踊らないでいつ踊るんや!踊れ踊れ~!」


松前「沸かせ沸かせ~~!!」


望月「んもー!!わ、私も踊ってやるーーー!!」


冬原「おめでとう!おめでとー!」


松前「幸せになるんだぞーー!」


望月「あ、ありがとーー!幸せになるーー!」


冬原「でもでもでも、私達が1番あなたの事大好きなんだからね!」


松前「そうよそうよー!今までもこれからも、ずっとそうなんだから!」


望月「ええええ、きゅ、急にデレた!あ、ありがとう!私も大好きだよ!」


冬原「わかればよし!さあ踊れ踊れ~!」


松前「FUUFUUUUUUUU!」


望月「い、いえーーい!2人もこれからも、よろしくね!」


冬原・松前「「こちらこそ!!」」


~完~




◎あとがき

私の大切な幼馴染が結婚します。嬉しいやら、寂しいやら。幸せのおすそ分けをいただきました。彼女へのお祝いに、この複雑な気持ちを込めたこの台本を贈ります。本当におめでとう!より一層幸せになりますように。


ちなみに実際はかれぴっぴとその場でテレビ通話させてもらいました。へへっ!!

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題名:土食いねェ!

作者:オニオン侍

人数:3人(1:2)


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【本作における著作権管理・利用について】


本作は著作権フリーであり、サークル活動、


無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。


また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、


必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(配信などございましたらぜひお教えください!)


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時間:20分


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【配役】


○男性


名前:A

年齢:20代

概要:土を食わない



○女性


名前:B

年齢:20代

概要:土を食う



名前:C

年齢:20代

概要:実は土を食いたくない



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本文



B宅に集まるA、B、C。


C「やっほー、来たよー!」


B「へいらっしゃい!土食いねェ!」


A「お会計で」


B「つれねぇなぁ!」


A「帰るぞ」


B「まあまあ、そう言わず!上がって上がって〜!」


C「わーい、お邪魔しまーす!」


B「さささ、どーぞどーぞ!」


A「押すな押すな、わかったから」


C「わぁ、お部屋可愛いー!」


A「てっきり茶色一色にしてるのかと」


B「土カラーってか!土は塗るもんじゃなくて、食うもんだからねー!」


A「んなわけねぇだろ」


B「さーさ、ここ座って〜!すぐに始めるからねー!」


A「永遠に始めなくていいぞ」


C「とかいいつつ、ちゃんと座って待ってるから偉いよね!」


A「あ"?……この前の忘れたのか?」


C「……あー……あはは、そうだったね」



回想。先週の休日。A宅前にて。

インターホンを連打するB。渋々扉を開けるA。


A「……はい」


B「遊びにきーたよー!」


A「帰れ」


C「せっかく来たのにー!」


A「帰れ」


B「ほら見て!採れたての土!!」


A「持ち帰れ」


C「お昼まだでしょー?食べなよー!」


A「持ち帰れ」


B「ぬぬ……わかったよ!帰りますー!」


A「おう、立ち去れ立ち去れ」


B「一緒に食べたかったのになー!」


C「朝から頑張って採って来たのにー!」


B「しっとり赤土もあるのになー!」


A「ええっじゃあ食べます!とか言うと思ってんのか」


B「言うでしょ!!もー知らん!知らんぞー!」


C「頑固者ー!」


A「お前らで食べればいいだろ。食える量増えてよかったじゃねえか」


B「幸せは分けてこそですー!ねー!」


C「そ、そーだそーだー!」


A「……お前、食う気ねえだろ」


C「え"っ、やだなあ、そんな事ないよ」


A「そーかそーか。そんじゃ俺の分も美味しく食っといてくれ」


B「言われなくてもたくさん振る舞いますー!女子"土"会に変更しますー!」


C「え"っ」


B「え?」


C「あ、あー!大変!お腹痛くなって来ちゃったー!あいたたた」


A「演技力クソかよ」


C「あーいたたた、今は何も食べられなさそー!!」


B「大丈夫?!早く帰って休まなきゃ!」


C「ご、ごめんねー!あいたた、また来週ー!」


A「おう、2度と来んな」


B「来週は我が家にご招待してやるからな!覚えとけ!」


A「なんだその捨て台詞……」


立ち去るB、C。部屋に戻るA。


A「騒々しいにも程があんだろ……はぁ……っこいしょっと……」


ベッドに寝そべり寛いでいると、玄関の方から何やらゴソゴソと物音が聞こえる。


A「あ?なんだ?配達か……?」


不審そうに玄関の方へ視線を送る。


A「特に何も頼んでねえしな……まあ、いいか」


一度起こした上体を再びベッドに沈み込ませる。静かな部屋に物音が鳴り続ける。


B「えいっえいっ……んー……もうちょいいけるかな?!」


C「こ、声が大きいよ!」


B「やば!バレちゃうバレちゃう!」


A「……ん?空耳か……?」


B「しっかし、あいつも馬鹿だなー!こんなに良い土をみすみす逃すなんて!」


C「そ、そうだよね!」


B「あんまりにもかわいそうだから、こうしてお裾分けしてあげてるんだけどね!」


C「優しいなあ」


B「でもこういうのってやっぱりサプラーイズ!がいいじゃない?」


C「うんうん」


B「だからコソコソ詰め込んだらささーっと逃げなきゃねー!」


A「空耳じゃねえなこれ!あいつら帰ったんじゃなかったのか?!」


慌てて玄関へと駆けていくA


C「や、やばい!足音近づいてるよ!」


B「えいえいっ!よっしゃ!逃げるぞー!」


A「おいこら!!」


勢いよく扉を開く。それと同時に異様に扉が重たく感じる。


A「は……?」


B「ちょっとー!そんなに勢い良く開けたらこぼれるでしょー!」


C「あ、あ、えっとー」


A「扉クッソ重てぇ……お前ら何しやがった!」


B「もー、気がつくの早すぎ!せっかくサプラーイズしようと思ったのに」


A「サプライズだぁ……?おい、ポストどうなってんだこれ、ギッチギチじゃねえか」


B「サプラーイズ!!!!」


C「さ、さぷらーいず」


A「うるせぇ!何しやがった!」


B「ふっふっふ、開けてごらん!いいものだよ!」


A「ふざけんな!どうせ土だろ!」


B「さあ、さっさと開けるんだ!」


C「開けろ開けろー!」


A「ほんとふざけんなよお前ら……クソッ……」


ポストを開け、詰め込まれたそれをひとつまみ取るA。


B「テッテレー!」


A「やっぱり土じゃねえか!!」


B「喜べ!お裾分けだ!」


C「わー!」拍手


A「ふざけんな!人んちのポストに土詰め込みやがって!!」


B「ちょっと急だったからさー、本当はね?ラップとかに包んであげたかったんだけどー」


A「話を聞け!」


B「でも大丈夫!水で洗えばちゃんと美味しく食えるから!」


A「うるせえ!持ち帰れ!!」


回想終了。Aは大家さんに見つかる前に頑張ってお掃除しました。



C「いやぁ、先週は大変でしたね、あはは」


A「あ"?」


C「すいません……」


A「今日もな、断った方がめんどくせえ事になるから来てるだけだ」


C「あ、あはは……その節はどうも!」


A「お前も共犯だからな、覚えてろよ」


C「うう、すんまへん……」


B「お待たせー!」


A「微塵も待ってねぇけどな」


B「それじゃ始めるよ!」


C「わー!」拍手


B「土のフルコースパーティー始まり始まりー!」


A「すでに帰りてえ」


B「まずはこちら!前菜の盛り合わせです!召し上がれー!」


C「わ、めちゃくちゃ綺麗!すごーい!」


A「見た目はマトモなんだな……」


B「失礼な!味も完璧ですー!!」


C「えっと、これはなーに?丸くてキラキラしててすっごく可愛い……」


B「お目が高い!こちらはめちゃくちゃピカピカに磨き上げた土団子です!」


C「つ、つちだんご……」


A「無駄な技術持ちやがって……」


B「あったかいうちに召し上がれー!」


C「あったかいんだ……」


A「ホットな泥団子ってなんだよ、意味わかんねえな……」


B「土団子ですー!」


A「変わんねーだろ!」


C、震えながらナイフとフォークで土団子を割ってみる。どろり、と液体が溢れ出す。


C「ひ、ひい……中から何かでてきた」


B「あっそれはね、練りに練った土だよ!」


A「土の中に土を仕込んでやがる」


B「もー!2人とも冷めちゃうから早くお食べ!」


C「ひ、ひい……」


A「んな目でこっち見んな。助けんぞ」


C「いいん……」


B「……もしかして、食うの嫌だった?」


A「おい、俺の時とは随分扱いが違うじゃねえか」


B「当たり前だろう!」


A「このやろう!」


C「う、うう……い、一生懸命作ってくれたんだもんね……う、うう」


B「3日前から仕込みを始めたよ!」


C「ひい、本格的ぃ……」


A「馬鹿かよ……。一応聞くが、この後何が出てくんだ?」


B「待ちきれないのー?仕方ないなぁ!全部出しちゃうから食べながら待ってて!」


A「誰が食うか!」


C「う、ううう……」


A「目瞑って震えてまで食おうとすんな馬鹿」


B「へいお待ち!土のフルコース大集合!」


C「あわわわわ……」


A「見た目だけマトモなのが腹立つな」


B「えっとね、こっちがメインの土ハンバーグで、スープは土のポタージュ!副菜は土のキッシュだよ!最後のデザートは赤土のプディング!さ!召し上がれ!」


C「な、なんでいい香りがするんだろ……」


A「謎の技術持ちやがって……」


B「土(ツチ)ンバーグはこのソースをかけるとより美味しくいただけます!」


A「小粋に略してんじゃねえぞ」


C「ち、ちなみに何のソース?」


B「オリジナルのガーリックオニオン"土(ツチ)"ソースだよ!」


A「ソースまでお手製かよ。もういっそ褒めてやろうか」


B「え!照れるんだけど!」


A「まだ褒めてねえよ!!」


C「う、うう……」


B「そんな事より食って食って!」


C「……うん、い、いただきます」


A「おい馬鹿、正気か」


C「私たちのために用意してくれたから……!」


B「ワクワク!」


C「うっ。そ、そんな目で見ないで……」


A「お人よしも考えもんだな」


B「ワクワク!ソワソワ!」


C「〜〜!!えいっ」


C、土ンバーグのひとかけらを口に放り込む。芳醇な土の香りが口いっぱいに広がる。


C「も、もぎゃ……」


A「おい、しっかりしろ!」


C「そういえば、ちっちゃい頃からこんな感じだったなぁ……うふふ……」


A「おい!帰って来い!おい馬鹿!」



回想。B、C幼少期。砂場で仲良く遊ぶ2人。


幼B「へいらっしゃい!おしゅしやさんだよ!」


幼C「たまごのおしゅしくーださい!」


幼B「あいよー!ぎゅっぎゅっ……できたー!へいお待ち!」


幼C「わぁ、すごぉい!おいしそー!」


幼B「へへへー!」


幼C「パクパク……おいしー!」


幼B「あれ?」


幼C「どうしたのー?」


幼B「だって食べてないのにおいしーって変なのー!」


幼C「えー!だって土は食べないよー?」


幼B「土じゃないもん!たまごのおしゅしだもん!」


幼C「うう、で、でもー!」


幼B「頑張って作った、たまごのおしゅしだもん!!!」


幼C「あ、あわわ……な、泣かないでぇ」


幼B「たまごのおしゅしなのぉーーー」


幼C「う、うう……ぱ、パクパク!」


幼B「ひっく……ひっく……」


幼C「もぎゃ……お、おいしー……」


幼B「へへ……へへへぇ!そうでしょー!」


回想終了。この後Cは無事にお腹を壊しました。



C「たまごのおしゅし……へへへ……」


A「おい!しっかりしろ!」


C「はっ」


A「完全に目がイってたぞ、お前」


C「こ、これが走馬灯……?!ふわっ、口から土の香り!」


B「ねえねえ!美味しかった?!」


A「容赦なさすぎんだろ」


C「お、おお、おいしかったよ!」


B「へへへ、そっかー!よかったー!おかわりあるから、どんどん食べてね!」


C「い、いいん……」


A「こっち見んな」


B「ふんふんふーん!」


A「お前は上機嫌すぎるだろ」


B「えー?だって嬉しすぎるでしょ!大事なお友達と、大好物を一緒に楽しめるなんてさ」


A「……このやろう。それを否定したら完全におれが悪者じゃねえか」


C「大事な……お友達……」


B「へへー」


C「へへ……」


A「……お前、それで良いのか?」


C「えっ……ど、どういうこと?」


A「お前だけ我慢して、それで良いのかって事だよ」


B「我慢……?」


C「我慢なんて!!」


A「これからもずーっとこれ食うんだぞ」


C「ず、ずっと……」


B「な、なになになに、なんの話さ」


A「お前らが仲良しこよしなのは勝手だけどな、片方が押し付けてんの見るのは気分が悪ぃ」


C「……押し付けなんかじゃない……けど」


A「あとは知らん。俺は帰る」


帰ろうとするA、慌てて腕を引っ張るB。


B「あ、ちょっとー!まだ食ってないじゃーん!こらこら!」


C「あ、あ、あのね!」


B「わっ、びっくりした!なになになに、どうしたの」


A「頑張れよ。じゃあな、また来週」


B「えー!ちょっと!じゃあこれ!はい!またね!」


小包みを押し付けるB。手をヒラヒラ振りながら帰るA。


B「どしたのどしたの、しょんぼりしちゃって」


C「あのね……ちっちゃい時から、仲良くしてくれて……ほんとにありがとう」


B「急になにー!こちらこそだよ、ありがとう!大好き!」


C「へ、へへへ……えっとね、でもね……」


B「わっわっ、泣いちゃいそうな顔して!どうしたのどうしたの、よしよーし」


C「ぐすっ……ごめんね。あのね……私、実はね、ずっと前から……土を、食いたくないの……」


B「……え?」


C「ごめんね、ごめんね……頑張って食えるように練習したけど……ダメだった……」


B「ま、待って待って……ずっと前からって……えっ、でも一緒に」


C「ごめんね……嫌われたくなかったから……泣かせたく、なかったから……」


B「そ、っか……」


C「嘘をついてて、本当にごめんなさい」


B「そっかぁ……」


C「……ごめんね……」


B「ううん、教えてくれてありがとう。びっくりしたけど……というか!ずっと嫌なのに食わせてごめんね?!」


C「へ……?」


B「もー!てっきり土好きなんだと思って!ぜーんぜん気が付かなかった。ほんとごめん!」


C「う、ううん……」


B「お詫びにさ、好きな物教えて?いっぱい用意するよー!」


C「へ?!え、えっとケーキが好きなの……」


B「ケーキね!わかった!どこのお店にしよっかな〜!」


C「え、えっと……土、食わない私とも……仲良くしてくれる?」


B「へ?!もちろんだよ?!なんで?!」


C「……へへっ、そっかぁ」


B「えー!なになになにー!」


B宅の玄関前。佇むA。


A「お前らほんと馬鹿だよなぁ」


A、受け取った小包みから一つ土団子を取り出す。


A「おみやの土団子ってか?ふざけやがって」


ガブリと土団子にかぶりつく。


A「……はーーー……ほんと、馬鹿だよなぁ」


呆れたように笑いをこぼし、その場を後にする。


〜完〜




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題名:さーちあんどですとろい

作者:オニオン侍

人数:3人(0:3)


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【本作における著作権管理・利用について】


本作は著作権フリーであり、サークル活動、


無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。


また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、


必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(配信などございましたらぜひお教えください!)


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時間:5分


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【配役】

男性に変更可能


○女性


名前:A

年齢:10

概要:ネーミングセンスがぶっ飛んでる



名前:B

年齢:10

概要:常識人だが悪ノリ大好き



名前:C

年齢:10

概要:振り回される苦労人


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本文



●夏、とある田舎の住宅地


A「さーちあんどですとろいを始めます」


B「いえーい!」


C「なんて?」


A「ルールは簡単。鬼から逃げます」


C「それはもうただの鬼ごっこなんじゃ……」


A「鬼は容赦なくこのチャカで逃亡者を撃ちます」


B「人数分あるけど!」


A「じゃあ逃亡者も応戦可能とします」


C「緩くない?ルール緩くない?」


A「みつけて、うって、ですとろいする。それが、さーちあんどですとろいです」


C「あとね、チャカじゃないからね。水鉄砲っていうれっきとした名前があるからね」


B「さーちあんどですとろーい!いえー!」


C「なんでさっきから順応してるの!?はやくない!?」


A「それでは水チャカを配布します」


C「ちょっとだけ話聞いてくれてありがとうね、うん。水の部分だけ採用してくれたね」


B「はーい、鬼はどうやって決めるんですか!」


A「考案者の私がまずは鬼のお手本をお見せしようかと」


B「りょうかーい!それじゃ、逃げるぞー!」


C「えっ、あ、待って待ってー!」


A「カウントダウン開始。10……9……8……」



C「3人の中で1番足速い人が鬼って怖すぎるんだよなぁ……」


B「あははっ!ですとろい、ですとろーい!」


C「うわっ、もう交戦してる……い、今のうちに移動しよ……」


A「ターゲット追加捕捉」


C「ひぃいい?!え、ちょ、回り込まれっ」


B「助太刀するよー!えいえい!」


A「やりますね。さすが、といった所でしょうか。すでにさーちあんどですとろいを使いこなしている」


C「た、助かったぁ……って、え、それって使いこなすとかそういうのなの」


B「ほらほら、どんどんいくよー!」


A「2対1はさすがに不利ですね、ここは一旦」


C「え、えいっ!」


A「おっと」


B「ひゅー!やるねー!いいぞいいぞー!えいえい!」


A「ほう……あなたがまさか一矢報いようとしてくるとは。予想外でした」


C「ひっ、ひえええええ」


A「好戦的態度、悪くない。やはりあなたはここで仕留めさせてもらいましょう」


B「えーい!隙あり!」


A「おっと」


C「え?あ、ちょ、おぼぼぼぼぼ」


A「危ないところでした」


B「あちゃー。まさか身代わりの術使うなんて!」


C「お、おそろしい……これが……さーちあんどですとろいか……」



A「私の、完全勝利ですね」

B「うーん、悔しい!結構いい線いってたと思うんだけどなー!」


C「ねぇ、私だけべっしょべしょなんだけど。ねぇ」


A「今度は鬼を交代してやりましょう」


C「まだ?!まだ続くの?!」


A「もちろん。ちなみに冬は、うちの庭でさーちあんどですとろい~雪合戦編~を開催する予定です」


C「もう雪合戦でいいじゃん!!」


B「いえーい!!」


C「もうやる気がすごい!!」


A「ちなみに」


C「今度は何!」


A「このさーちあんどですとろいですが、日本の伝統文化である『打ち水』から構想を得ています」


B「なるほどねー!確かに今日みたいにあつーい日に、こうやってべっしょべしょになってたら涼しくなっていいもんね」


C「えっ……そんなに考えられてたの……?」


A「一番べっしょべしょのあなたなら、この旧き良き文化、そしてそれを未来に繋ぐ新たな着眼点の素晴らしさがよくわかるのでは?」


C「ま、まぁ……言われてみれば……風が、気持ちいかも」


B「ふーぅ!涼しいー!」


A「と、いうわけで、2回戦いきますよ。鬼はあなたです」


B「よっしゃー!逃げろー!」


C「え?!私が鬼?!嘘!ちょ、2人ともはっや!!もー……ふふ、仕方ないなぁ!いーち、にー、さーん……」


~完~


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【あとがき】

作者の幼少期の頃の思い出を脚色し、台本に仕上げてみました。

幼馴染3人で行うさーちあんどですとろいは、とても楽しいものです。

ぜひ皆さんもやってみてください。雪合戦も楽しかったです。


ぼくはたまねぎ
題名:ぼくはたまねぎ

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、

無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:10分弱

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※配役


たまねぎ(♂):ぼくはたまねぎ。10代。

男性(♂):ヤバイ。30〜40代。

女性(♀):謝りにくる人。30〜40代。

Mは胸中での発言です。

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※流血表現、胸糞悪い内容がございます。

ご注意ください!!

本文


たまねぎM「ぼくはたまねぎだ。いつも彼女を泣かせてしまう。だから、今日も部屋の隅でひっそりと過ごすんだ」

男性「あー、くそ、イライラすんな」

たまねぎM「けれど、いつもこの時間に彼はやってきて、ぼくを部屋から連れ出してしまう」

男性「はーい、今日も脱ぎ脱ぎしまちょーねー」

たまねぎM「そういって、にこにこ顔でぼくを裸にするんだ」

男性「んふ、綺麗な真っ白お肌でちゅねえ」

たまねぎM「ひとしきりぼくの体を撫でまわして、必ずこう言うんだ」

男性「いーっぱい、切り刻んであげまちゅねー!」

たまねぎM「そう言って、鋭く砥がれた包丁を取り出す」

男性「ゆーっくり、ゆーっくりいきまちゅよー」

たまねぎ「うっ…ぐ…」

男性「動くんじゃねえ、このグズが!!!」

たまねぎ「ひっ…ごめんなさい…」

たまねぎM「冷たい包丁の刃が、脇腹に当てがわれる。ゆっくり、ゆっくりと赤い線が浮かぶ。ぷくり、ぷくりとぼくの苦しみが液体となって滲み出す」

男性「ゆーっくり、ゆーっくり…」

たまねぎM「冷たい刃が通る、身が切れる、熱くなる、冷たい刃が通る、身が切れる、熱くなる」

たまねぎ「う…ぐ…」

男性「動くんじゃねえっつってんだろ!!擦り下ろされてえのか、ああ?」

たまねぎ「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

男性「ったくよぉ…」

たまねぎM「体中から、ぼくの苦しみが溢れて、溢れて、止まらなくなる。そうしたら彼女が必ず現れる」

女性「ね、ねえ…それくらいにしたら…?」

男性「あ?んだとてめえ、俺に口出しすんなっつってんだろ、わかんねえのかこのクソアマが!」

女性「ひっ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい…」

男性「ちっ…」

たまねぎM「毎日、こんなやりとりをして一度彼はタバコを吸いに行く。ぼくは、裸のまま、待っている」

女性「…ああ…。ごめんね、ごめんね…痛いよね、ごめんね…」

たまねぎM「傷ついたぼくのからだを見て、彼女はいつも涙を流す。ごめんね、ぼくのせいで、あなたはいつも泣いている」

女性「ごめんね…」

たまねぎ「…あの」

男性「おい」

女性「ひっ」

男性「俺が怖いか?あ?」

女性「あ…あ…」

男性「ちっ、さっさと失せろ」

たまねぎ「あ…」

たまねぎM「彼女は、躊躇いながらも走り去ってしまった。また、謝れなかった」

男性「はーい、ごめんねー、寂しかったでちゅねー、今いーっぱい可愛がってあげまちゅからねー」

たまねぎM「今夜の夜も、まだまだ、明けない」


たまねぎ「うっ、ぐ…」

男性「ちっ…ふらふらふらふらしやがって…!」

たまねぎ「ごめんなさい…ごめんなさい…」

男性「仕方ねえなぁ?言っても伝わらねえんじゃ、どうしようもねえよなあ?」

たまねぎM「この日は、いつもと違った。彼は包丁を置く」

男性「その邪魔くせえ足、切り落としちまうか!」

たまねぎ「ひっ…」

男性「おら、そこに寝ろ!」

たまねぎM「ぼくは突き飛ばされ、地面に転がる。そして彼は肉切り包丁を高らかと掲げ、ぼくに目掛けて躊躇なく振り落ろした」

たまねぎ「……!あ…れ…」

女性「っぐ、う…あ、ぁ…」

たまねぎ「…え…」

男性「あ?」

たまねぎM「女性の背中に、深々と肉切り包丁が突き刺さる」

たまねぎ「…なん、で」

女性「ごめん、ね…」

たまねぎM「女性が声を発すると同時に、大量の血が口から吐き出される。それをぼくは、全身に浴びた」

男性「邪魔しやがってこのアマぁ!!どけ!この!くそ!」

女性「うっ、ぐ…は、あ…」

たまねぎM「何度も、何度も、何度も振り下ろされる。もう、呼吸すらままならない彼女は、ぼくを見てまた泣いた」

女性「こんな…ことしか、できないお母さんで…ごめん、ね…」

たまねぎ「…あ…」

たまねぎM「泣きながら、彼女はぐったりとぼくにもたれかかって、それきり動かなくなった」

男性「おら!おら!くそ!くそくそくそ!…ふー、くたばったか…めんどくせえなぁ…」

たまねぎM「そう言って、いつも通り彼はタバコを吸いに行った。いつも通りなら、この後彼女が謝りに来るんだ。けれど、今日は」

たまねぎ「…起きて…」

たまねぎ「起きて…起きてよ…」

たまねぎM「ただ静かに、彼女は動かない。そうわかった瞬間、ぼくの苦しみが、堰き止められていた水のように溢れ出して、止まらなくなった。苦しくて、苦しくて、たまらない。だけど、悲しみに溺れてしまうその前に、これだけは伝えないといけないんだ」

たまねぎ「…お母さん…ごめんなさい…」

たまねぎM「ぼくは、お母さんを、ぎゅっと抱きしめて」

たまねぎ「待っててね」


お前とはもう
題名:お前とはもう

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、無料放送、

商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:5分弱

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※配役


A(♂):いわゆるレッド

B(♂):いわゆるブルー

N(どちらでも):ナレーション

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本文

N:デパートの屋上にて。ヒーローショーが行われている。赤と青のコンビヒーローが、見事悪役を倒し、子供たちから声援が送られる。

A「おっつかれー!いやぁ、やっぱお前と組んでよかったわ!」

B「おう、お疲れ。…そうか…」

A「なんだよ、元気ねーなぁ。どうした?」

B「…すまん!俺…お前とはもう、組めない」

A「は…え、ちょ、なんでだよ!めちゃくちゃいいコンビじゃんか、俺ら!」

B「お前は悪くない、悪くないんだ…だが、もう…すまん!」

A「待てって!一回落ち着いて話そう、な?」

B「…話したところで、俺は…」

A「俺の気が済まねえだろ!話してみろって」

B「…わかった」

N:彼の表情はかたく、そして寂しそうだった。閉ざされていた口がゆっくりと開かれる。

B「俺…お前が闘ってる姿を見ると興奮するんだ」

N:その目に濁りは一切なく、晴れた日の夏空のように純粋で、澄み渡っていた。

A「………は?」

B「ああ、勘違いしないでくれ。性的な意味じゃないんだ。元はと言えば、俺はお前のファンだった。それはもう憧れて憧れて…」

A「…性的な…」

B「しなやかな筋肉、それから繰り出される技、光る汗…それを誰よりも近くで見られるんだ。ファンである俺はもう大興奮だよ」

A「大興奮…」 

N:彼の話をまとめるとこうだ。たまたま見たヒーローショーで、すっかりファンになってしまった彼は、憧れすぎたあまり、隣で見たいと思うようになったそうだ。そうして願いは叶い、特等席で毎日興奮していると。

B「お前が闘ってる姿は、なんていうかこう…滾るんだよ」

A「滾る」

B「かっこいい、なんて言葉じゃ生優しいんだ。わかるか、お前が何気なく笑いかけてくれるたび、こっちはファンサだ!神対応!と叫びたい気持ちを抑えてるんだ!」

A「ファンサ」

B「爽やかに握手だってしてくれるだろう?!握手会でもないのに!毎日が推しとの握手会だ!」

A「握手会」

N:真剣に語るその瞳は、らんらんと輝いていた。ガタッと突然立ち上がったかと思えば、鞄からあれやこれやとグッズを取り出して並べ始めた。

B「今まで売られたグッズは全部持っている」

A「おお…」

B「ああ、あとファンクラブができただろう。あれは俺が作った。会長兼第一号ってわけだな、はっはっは」

A「ま、まじかよ?!なんで急にとは思ったけど…お前が…そうか…」

N:そうして小一時間ほど、どれだけ憧れているか、どれだけ素晴らしいかを熱弁する。

B「…というわけだ。わかってもらえるなんて、思っちゃいない。だが、これ以上はもう…俺は俺を律せない」

A「んんんん〜…お、お前の俺へのリスペクトと、愛はよーくわかった、伝わった。なんつーか…ありがとう?」

N:無意識に解き放たれたスマイル、ファンとして初めて認識され、加えての神レスポンス。

B「う"っ」

N:推しからの突然の供給過多に、彼は心臓をおさえ膝をついた。

A「大丈夫か?!どうした?!」

B「ま、まて…それ以上近づくな…死ぬぞ…俺がな」

N:ぷるぷると震えながらも、ゆっくりと立ち上がるその姿は、ボロボロになってもまだ闘おうとする戦士そのものだった。

A「お、おい…」

B「ああ…くそ、このポジションはやっぱり誰にも譲りたくない…そう思ってしまった…」

A「ん…?」

N:切なく、儚げな表情を浮かべ、こう告げた。彼なりの、覚悟を持った問いだった。

B「なあ…俺…これからもお前の隣で、興奮していいか…?」




帰宅部TA
題名:帰宅部TA

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、

無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても

報告は不要であり、必要に応じて 

改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:5分弱

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※配役(全て不問)


帰宅部:帰宅に命をかけている

実況:実況に命をかけている

解説:解説に命をかけている

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本文


実「もう間も無く、本日の帰宅部TA(タイムアタック)が始まろうとしております」

解「今日は晴れていますからね。良い成績が見込めます」

実「さあここで、放課後のチャイムが鳴り響く!戦いの火蓋が切って落とされたぁ!」

解「良い滑り出しです」

帰(スタートから10秒、廊下を右に曲がり、インコースを狙う…)

実「昨日、軽量化したカバンですが、どう活きて来るか楽しみです」

解「やはり、後半でしょうね。体力の消耗が大きく抑えられます」

帰(下駄箱…生徒は1.2…よし、いける)

実「で、出たあああ!帰宅部名物、早履きいい!」

解「無駄のない洗練された動きです」

帰(直線20m…人通りなし、ダッシュだ!)

実「ここで猛ダッシュです。一気にタイムを縮めてきましたね」

解「そうですね、きちんと人の有無を見極めていますし、これは評価にも繋がります」

実「ああっと、前方の信号は赤!」

解「これは痛手ですね」

帰「くそっ…迂回ルートだ!」

実「左に曲がりましたね」

解「これはおそらく、先に左に入っておく作戦でしょう」

帰「はぁっ、はぁっ…」

実「おっとぉ、息が上がっている!カバンの軽量化は活かされなかったのか?!」

解「午後の体育の影響でしょう。足にきているようです」

帰(次の信号は…青!よしっ)

実「しかし運は味方している!人通りもない、信号は青!」

解「先ほどの遅れを取り戻せますね」

実「この信号を越えれば、あとは直線を残すのみ!ラストスパートです!」

帰「はぁっ、はぁっ…人通り、なし…体力…残り40%…大丈夫、いける!!」

実「はやい、はやすぎる!まさに猪突猛進…帰宅への熱い思いが、我々にもひしひしと伝わって参ります!」

解「フォームも崩れていません、素晴らしいです」

帰(あと、少し…あと少し!)

実「ドアノブに手がかかるー!」

帰「は、ぁ…はぁ、はぁ…タイムは…よしっ!」

実「今…見事、帰宅しました!!記録は……5分45秒!新記録です!」

解「午後の体育というハンディにも負けない、見事な帰宅でした」

帰「はぁ…ただいまー」

実「今後も、熱い帰宅を期待しましょう!実況は、実況部部長がお送りいたしました」

解「解説は、解説部部長がお送りいたしました」

実「それじゃ帰るか〜」

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