
題名:帰宅部TA②
#24
作者:オニオン侍
人数:4人(4:0)
---------------------------------------
【本作における著作権管理・利用について】
本作は著作権フリーであり、サークル活動、
無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。
---------------------------------------
時間:20〜30分
---------------------------------------
▼配役
●男性
名前:三宅(みやけ)
年齢:高3
概要:帰宅部のエース
*
名前:家入(いえいり)
年齢:高1
概要:帰宅部のホープ
*
名前:実況
年齢:高3
概要:実況に命をかけている
*
名前:解説
年齢:高3
概要:解説に命をかけている
---------------------------------------
本文
*
実況「さあ、まもなく"帰宅部TA(タイムアタック)春の選抜決勝戦"が始まります」
解説「今日は快晴ですからね、いい成績が見込めます」
実況「帰宅部のエース、三宅選手がスタート位置につきました」
三宅「ふう……大丈夫だ。いつも通り……いつも通りに俺は家に帰る、そう、それだけだ……」
解説「普段よりも緊張した面持ちですね。こちらにも緊迫した空気が伝わってきます」
実況「続いて帰宅部のホープ、家入選手が位置につきます」
家入「この大会の記録保持者って、三宅先輩なんでしたっけ〜?」
三宅「家入……。ああ、そうだが」
家入「じゃあそれも、今日までっすね!」
三宅「……挑発してるつもりか?」
家入「やだなあ、そんなに睨まないでくださいよー!年下に負けるのが怖いからってえ」
三宅「結果が全てだ。軽口はそこまでにしておけ」
実況「両者睨み合い、熱い火花を散らしております」
解説「青春、ですね」
♪キーンコーンカーンコーン
実況「さあここで、放課後のチャイムが鳴り響く!戦いの火蓋が切って落とされたぁ!」
解説「良い滑り出しです」
家入「あっは!先パァイ、お先っすー」
実況「家入選手、華麗なスタートダッシュだ!」
解説「長い脚を活かした大きな踏み込み、素晴らしいです」
三宅「カーブ突入まであと5……4……3……」
実況「三宅選手ゥ!冷静沈着!眉ひとつ動かさず、見事なフォームで玄関へと滑り込みます!」
解説「彼の強みですね、どんな状況でも平常心を貫ける」
家入「っとと……」
実況「おっとおおお!家入選手、スピードを落としきれずカーブ突入後にフォームを崩してしまったぁ!」
三宅「予選の時から、何も成長していないな」
実況「ここで後続の三宅選手が追いつきました!」
三宅「下駄箱……生徒数2……よし、いける!」
実況「で、出たあああ!帰宅部名物、早履きいい!」
解説「無駄のない洗練された動きです」
家入「デカい面すんの、俺の前を走ってからにしてもらえますぅ?」
実況「フォームを立て直した家入選手、僅かにリードを保ったまま第一関門へと突入ううう!」
解説「第一関門、やたらと長い信号ですね」
家入「先輩、俺の強さって何か知ってますよねえ?」
三宅「……ツラがいいところだけだろう」
家入「あは!そんな風に俺の顔見てたんですか!えっち〜」
実況「おっとお!家入選手、スピードを上げていくう!」
解説「スムーズなギアチェンジですね。柔軟な筋肉がなせる技でしょう」
家入「先輩、俺にはね幸運の女神がついてんすよ」
実況「軽やかに信号を渡っていくう!三宅選手もそれに続いて、あーーっとぉ!三宅選手の目の前に無数のりんごが転がり出てきたああ!」
解説「おばあちゃんのお買い物袋が破れてしまったようですね。あたふたされてます」
三宅「信号の切り替わりまで残り7秒……りんごの残数8……左方手前から順に拾えば、間に合う!」
実況「優しい!三宅選手優しい!!慌てるおばあちゃんに声をかけながら、丁寧にりんごを拾っていくうう!」
解説「品種はこの季節美味しいサンふじですね」
家入「ああ、ツいてないっすねえ!先輩はお優しいからあ……そういうの、ほっとけないですよねえ」
実況「信号を渡り切った家入選手、悠々と第二関門へと進んでいきます!」
解説「第二関門、やたらと混んでる大通りですね」
三宅「これで全部ですね。お気をつけて」
実況「遅れをとってしまった三宅選手ぅ!りんごを拾い切り、信号へと猛ダッシュだ!」
解説「ここで赤信号につかまれば、かなりのロスになります」
三宅「点滅まで残り5……4……!」
実況「はやい!はやすぎる!三宅選手、間に合うかあああ?!」
三宅「3……2……!」
実況「信号が赤に!」
三宅「いける!!!」
実況「切り替わっ……ま、間に合ったああ!」
三宅「はぁっ……はぁっ……大通りまでの距離……残り200……」
解説「そして瞬く間に渡り終え、既に次の関門へと意識を向けているようです。これがエースたる所以でしょうね」
家入「あーあ、渡れちゃったんすねえ。まあ、こんな余裕勝ちしても面白くないすから」
実況「家入選手、第二関門へと到達!すごい人混みだあ!し、しかしモーゼが海を割るかの如く、人の波が真っ二つに分かれていきます!」
家入「わあ、お姉さん達あざまーす!」
解説「顔面の良さをフルに活かした戦術ですね」
実況「お姉さん方にご挨拶をしながら、大通りを駆け抜けます!」
三宅「……さすがだな」
実況「ああっとぉ!家入選手が走り抜けるや否や、割れた海は元へと戻っていくうう!三宅選手、行手を阻まれてしまいました!」
家入「先パーイ、お先に失礼しまーす!俺のやり方、真似してもいいっすからねー!できないと思いますけど!」
解説「家入選手の煽りは、一級品ですね。腹が立ちます」
三宅「俺には、俺のやり方があるんだよ」
実況「三宅選手!スピードを落とし、前方をじっと見据えております!」
三宅「……右……左斜め……40%調整……踏み込みまであと3……2……1……!」
実況「低姿勢で大きく踏み込んだあああ!人混みに突っ込んでいくうう!」
三宅「傾きマイナス3%……心拍、異常なし……」
解説「持ち前の観察眼を活かして、僅かな隙間をかいくぐっているようです」
実況「しかも小声できちんと、すいませんとお伝えしているうう!優しい!三宅選手、優しいいい!」
家入「ちっ……先輩らしいっすね……」
三宅「はぁ、はぁっ……左方確認……安全確保、出力20%アップ……!」
実況「第二関門突破あああ!!人混みを抜け加速して行きます!家入選手との差は150m!」
解説「最後の関門までにもう少し縮めたいところでしょう」
実況「家入選手、さらに加速していきます!疲れを知らないのでしょうか?!」
解説「おそらく、今日一日居眠りをたくさんしたおかげでしょう。パワーが蓄えられています」
実況「最終関門に到達ううう!心臓を破るほどではないけれど、やたらとキツイ坂だあああ!」
解説「絶妙な勾配をしています。全力で駆け上がるには厳しい角度でしょう」
家入「こんだけ差があれば、俺の勝ち確っしょぉ……!」
実況「家入選手、トップスピードのまま坂に突入ううう!三宅選手も猛追しているうう!」
解説「ゴールまでスピードを保てる事ができれば、優勝は間違い無いでしょう」
家入「ぜえっ……ぜぇっ……せ、せんぱあい!俺の勝ちっすねえ!」
三宅「体力残り40%……呼吸、よし。心拍、異常なし。……目標、確認」
家入「はぁ……はぁ……無視すんな……俺を……俺を見ろやぁあ!」
実況「三宅選手、遅れて坂に突入うう!おっとおおお、家入選手が雄叫びを上げ、シャツをインし始めたああ?!何かの作戦でしょうか!」
解説「これは帰宅部に代々伝わる秘伝の技ですね。歴戦の猛者達もラストスパートをかける時に使っていました」
家入「俺がぁ!前を走ってんだよ!!ゴールばっか見てんじゃねえよおおお!」
実況「バッチリきめていた髪をかきあげ、後ろでくくったああ!!」
解説「何をしても顔がいいですね」
家入「お前はぁ!!俺に!!負けるんだよお!!」
実況「あああ!!ズボンをきゅっと上にあげたああ!さすがに!さすがにダサい!しかし、さらに加速したああ!」
解説「空気抵抗を極限まで減らし、持ち前の長い脚を存分に使えるようにした事で、さらなる加速が実現したのでしょう」
三宅「……やるな、家入」
家入「その余裕ぶったツラが!気に食わねえんだよ!!」
実況「縮まってきていた差が、一気に広がっていくううう!はやい!はやすぎる!」
家入「ぜえ……ぜえ……いつもいつも……お節介ばっか焼きやがって!うるせえんだよ!!」
三宅「はあっ……はあっ……悪いな……素質があるのに、何もしないからつい……口を出してしまうんだ」
家入「頑張ったところで……!どうせ限界があんだよ……!」
三宅「家入……」
家入「だから!!俺が勝ったら……2度と先輩面すんな……!大人しく、引退してすっこんでろ!」
三宅「ああ、わかった」
実況「家入選手!ゴールまであと100m!!」
解説「飛び散る汗すら絵になりますね」
家入「はぁっ、はぁっ……」
三宅「俺は、正直とても嬉しいんだ。お前がまさか、シャツ・イン・ザ・サンを使うなんてな……」
解説「帰宅部秘伝の技に、すごい名前がついていましたね」
家入「……ああ?バカにしてんすか」
三宅「お前がやっと、本気を出してくれたんだ。先輩として、嬉しく、そして誇りに思う」
家入「ちっ……だからなんなんすか、負け惜しみすか?」
三宅「いいや。ただの素直な俺の気持ちさ」
実況「おっとおおお?!三宅選手、こ、これは……!」
解説「……伝説の一戦となりそうですね」
三宅「だからこそ、俺は先輩として……本気でお前に勝とうと思う」
家入「ぜえっ……はぁ……は、ははは!無理っすよ!無理無理!だって」
三宅「お前との差は50m……お前は秘伝技を使いトップスピードに乗っている……」
家入「何が言いたいんすか!」
三宅「油断しているだろう。……はぁっ……はあっ……俺に勝てると、確信しているんだろう」
家入「そ、そうっすよ!息も上がって苦しいくせに余裕かましちゃって!そうやって俺のペースを乱そうとしてるんでしょ?」
三宅「……はあっ……はあっ……。……なあ、家入」
家入「な、なんすか」
三宅「忘れてるだろう……」
家入「忘れて……?」
三宅「シャツ・イン・ザ・サンは……」
家入「あ?……あ……」
三宅「俺がお前に……」
家入「ああ……!!」
三宅「……教えてやっただろう?」
実況「三宅選手うううう!!シャツを……入れたああああ!深い!深すぎる!インしすぎてズボンの端からはみ出そうだああ!」
解説「インからの急加速が見事です。しかしフォームは崩れず、依然として保たれています」
三宅「さあ、本気でやろうぜ……家入ぃ!!」
家入「くそっ……くそおおおおおお!!」
三宅「うおおおおおお!!」
実況「両者共に咆哮を上げ、さらに加速するううう!」
解説「三宅選手の追い上げが凄まじいですね!」
家入「うおおおおおお!!」
三宅「うおおおおおお!!」
実況「両者並んだあああ!!三宅選手、はやい!はやすぎるううう!!」
家入「ぜえっ、ぜえっ、くそっ……くそおおおお!!」
三宅「ゴールまで残り10……9……!」
実況「三宅選手ううう!ここに来て前へ躍り出たあああ!!」
解説「熱くなりながらも、コース取りが冷静です!」
家入・三宅「「うおおおおおおお!!!!ただいまああああ!!!!」」
実況「両者ほぼ同時にゴーーーーーーール!!!!今、ここに、熱き戦いに、終止符が、打たれました!!!!」
解説「帰宅部の歴史に残る、ひじょうに感動的な試合でした」
家入「ぜえっ……ぜえっ……」
三宅「はぁ……はぁ……」
実況「帰宅部TA(タイムアタック)春の選抜決勝戦……勝者は……三宅選手ーー!!!タイムは9分18秒!大会新記録です!」
三宅「うおおおおおおおお!!!」
家入「くそおおおお……」
実況「三宅選手、おめでとうございます!夏の全国大会も頑張ってください!」
解説「今年は団体戦もあるようです。帰宅部の皆さんの活躍が楽しみですね」
三宅「はぁっ……はぁっ……家入……全国に向けて、特訓しような」
家入「……はあ……わかりましたよ。先輩に勝つまで、みっちりやりますからね!」
三宅「はは……頼もしい後輩だ」
実況「今後も、熱い帰宅を期待しましょう!実況は、実況部部長がお送りいたしました」
解説「解説は、解説部部長がお送りいたしました」
実況「それじゃ帰るか〜」
〜完〜
▼あとがき
前作の【帰宅部TA】もぜひお楽しみください!

コメント