題名:土食いねェ!
作者:オニオン侍
人数:3人(1:2)
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本作は著作権フリーであり、サークル活動、
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(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)
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時間:20分
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【配役】
○男性
名前:A
年齢:20代
概要:土を食わない
○女性
名前:B
年齢:20代
概要:土を食う
名前:C
年齢:20代
概要:実は土を食いたくない
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本文
*
B宅に集まるA、B、C。
C「やっほー、来たよー!」
B「へいらっしゃい!土食いねェ!」
A「お会計で」
B「つれねぇなぁ!」
A「帰るぞ」
B「まあまあ、そう言わず!上がって上がって〜!」
C「わーい、お邪魔しまーす!」
B「さささ、どーぞどーぞ!」
A「押すな押すな、わかったから」
C「わぁ、お部屋可愛いー!」
A「てっきり茶色一色にしてるのかと」
B「土カラーってか!土は塗るもんじゃなくて、食うもんだからねー!」
A「んなわけねぇだろ」
B「さーさ、ここ座って〜!すぐに始めるからねー!」
A「永遠に始めなくていいぞ」
C「とかいいつつ、ちゃんと座って待ってるから偉いよね!」
A「あ"?……この前の忘れたのか?」
C「……あー……あはは、そうだったね」
*
回想。先週の休日。A宅前にて。
インターホンを連打するB。渋々扉を開けるA。
A「……はい」
B「遊びにきーたよー!」
A「帰れ」
C「せっかく来たのにー!」
A「帰れ」
B「ほら見て!採れたての土!!」
A「持ち帰れ」
C「お昼まだでしょー?食べなよー!」
A「持ち帰れ」
B「ぬぬ……わかったよ!帰りますー!」
A「おう、立ち去れ立ち去れ」
B「一緒に食べたかったのになー!」
C「朝から頑張って採って来たのにー!」
B「しっとり赤土もあるのになー!」
A「ええっじゃあ食べます!とか言うと思ってんのか」
B「言うでしょ!!もー知らん!知らんぞー!」
C「頑固者ー!」
A「お前らで食べればいいだろ。食える量増えてよかったじゃねえか」
B「幸せは分けてこそですー!ねー!」
C「そ、そーだそーだー!」
A「……お前、食う気ねえだろ」
C「え"っ、やだなあ、そんな事ないよ」
A「そーかそーか。そんじゃ俺の分も美味しく食っといてくれ」
B「言われなくてもたくさん振る舞いますー!女子"土"会に変更しますー!」
C「え"っ」
B「え?」
C「あ、あー!大変!お腹痛くなって来ちゃったー!あいたたた」
A「演技力クソかよ」
C「あーいたたた、今は何も食べられなさそー!!」
B「大丈夫?!早く帰って休まなきゃ!」
C「ご、ごめんねー!あいたた、また来週ー!」
A「おう、2度と来んな」
B「来週は我が家にご招待してやるからな!覚えとけ!」
A「なんだその捨て台詞……」
立ち去るB、C。部屋に戻るA。
A「騒々しいにも程があんだろ……はぁ……っこいしょっと……」
ベッドに寝そべり寛いでいると、玄関の方から何やらゴソゴソと物音が聞こえる。
A「あ?なんだ?配達か……?」
不審そうに玄関の方へ視線を送る。
A「特に何も頼んでねえしな……まあ、いいか」
一度起こした上体を再びベッドに沈み込ませる。静かな部屋に物音が鳴り続ける。
B「えいっえいっ……んー……もうちょいいけるかな?!」
C「こ、声が大きいよ!」
B「やば!バレちゃうバレちゃう!」
A「……ん?空耳か……?」
B「しっかし、あいつも馬鹿だなー!こんなに良い土をみすみす逃すなんて!」
C「そ、そうだよね!」
B「あんまりにもかわいそうだから、こうしてお裾分けしてあげてるんだけどね!」
C「優しいなあ」
B「でもこういうのってやっぱりサプラーイズ!がいいじゃない?」
C「うんうん」
B「だからコソコソ詰め込んだらささーっと逃げなきゃねー!」
A「空耳じゃねえなこれ!あいつら帰ったんじゃなかったのか?!」
慌てて玄関へと駆けていくA。
C「や、やばい!足音近づいてるよ!」
B「えいえいっ!よっしゃ!逃げるぞー!」
A「おいこら!!」
勢いよく扉を開く。それと同時に異様に扉が重たく感じる。
A「は……?」
B「ちょっとー!そんなに勢い良く開けたらこぼれるでしょー!」
C「あ、あ、えっとー」
A「扉クッソ重てぇ……お前ら何しやがった!」
B「もー、気がつくの早すぎ!せっかくサプラーイズしようと思ったのに」
A「サプライズだぁ……?おい、ポストどうなってんだこれ、ギッチギチじゃねえか」
B「サプラーイズ!!!!」
C「さ、さぷらーいず」
A「うるせぇ!何しやがった!」
B「ふっふっふ、開けてごらん!いいものだよ!」
A「ふざけんな!どうせ土だろ!」
B「さあ、さっさと開けるんだ!」
C「開けろ開けろー!」
A「ほんとふざけんなよお前ら……クソッ……」
ポストを開け、詰め込まれたそれをひとつまみ取るA。
B「テッテレー!」
A「やっぱり土じゃねえか!!」
B「喜べ!お裾分けだ!」
C「わー!」拍手
A「ふざけんな!人んちのポストに土詰め込みやがって!!」
B「ちょっと急だったからさー、本当はね?ラップとかに包んであげたかったんだけどー」
A「話を聞け!」
B「でも大丈夫!水で洗えばちゃんと美味しく食えるから!」
A「うるせえ!持ち帰れ!!」
回想終了。Aは大家さんに見つかる前に頑張ってお掃除しました。
*
C「いやぁ、先週は大変でしたね、あはは」
A「あ"?」
C「すいません……」
A「今日もな、断った方がめんどくせえ事になるから来てるだけだ」
C「あ、あはは……その節はどうも!」
A「お前も共犯だからな、覚えてろよ」
C「うう、すんまへん……」
B「お待たせー!」
A「微塵も待ってねぇけどな」
B「それじゃ始めるよ!」
C「わー!」拍手
B「土のフルコースパーティー始まり始まりー!」
A「すでに帰りてえ」
B「まずはこちら!前菜の盛り合わせです!召し上がれー!」
C「わ、めちゃくちゃ綺麗!すごーい!」
A「見た目はマトモなんだな……」
B「失礼な!味も完璧ですー!!」
C「えっと、これはなーに?丸くてキラキラしててすっごく可愛い……」
B「お目が高い!こちらはめちゃくちゃピカピカに磨き上げた土団子です!」
C「つ、つちだんご……」
A「無駄な技術持ちやがって……」
B「あったかいうちに召し上がれー!」
C「あったかいんだ……」
A「ホットな泥団子ってなんだよ、意味わかんねえな……」
B「土団子ですー!」
A「変わんねーだろ!」
C、震えながらナイフとフォークで土団子を割ってみる。どろり、と液体が溢れ出す。
C「ひ、ひい……中から何かでてきた」
B「あっそれはね、練りに練った土だよ!」
A「土の中に土を仕込んでやがる」
B「もー!2人とも冷めちゃうから早くお食べ!」
C「ひ、ひい……」
A「んな目でこっち見んな。助けんぞ」
C「いいん……」
B「……もしかして、食うの嫌だった?」
A「おい、俺の時とは随分扱いが違うじゃねえか」
B「当たり前だろう!」
A「このやろう!」
C「う、うう……い、一生懸命作ってくれたんだもんね……う、うう」
B「3日前から仕込みを始めたよ!」
C「ひい、本格的ぃ……」
A「馬鹿かよ……。一応聞くが、この後何が出てくんだ?」
B「待ちきれないのー?仕方ないなぁ!全部出しちゃうから食べながら待ってて!」
A「誰が食うか!」
C「う、ううう……」
A「目瞑って震えてまで食おうとすんな馬鹿」
B「へいお待ち!土のフルコース大集合!」
C「あわわわわ……」
A「見た目だけマトモなのが腹立つな」
B「えっとね、こっちがメインの土ハンバーグで、スープは土のポタージュ!副菜は土のキッシュだよ!最後のデザートは赤土のプディング!さ!召し上がれ!」
C「な、なんでいい香りがするんだろ……」
A「謎の技術持ちやがって……」
B「土(ツチ)ンバーグはこのソースをかけるとより美味しくいただけます!」
A「小粋に略してんじゃねえぞ」
C「ち、ちなみに何のソース?」
B「オリジナルのガーリックオニオン"土(ツチ)"ソースだよ!」
A「ソースまでお手製かよ。もういっそ褒めてやろうか」
B「え!照れるんだけど!」
A「まだ褒めてねえよ!!」
C「う、うう……」
B「そんな事より食って食って!」
C「……うん、い、いただきます」
A「おい馬鹿、正気か」
C「私たちのために用意してくれたから……!」
B「ワクワク!」
C「うっ。そ、そんな目で見ないで……」
A「お人よしも考えもんだな」
B「ワクワク!ソワソワ!」
C「〜〜!!えいっ」
C、土ンバーグのひとかけらを口に放り込む。芳醇な土の香りが口いっぱいに広がる。
C「も、もぎゃ……」
A「おい、しっかりしろ!」
C「そういえば、ちっちゃい頃からこんな感じだったなぁ……うふふ……」
A「おい!帰って来い!おい馬鹿!」
*
回想。B、C幼少期。砂場で仲良く遊ぶ2人。
幼B「へいらっしゃい!おしゅしやさんだよ!」
幼C「たまごのおしゅしくーださい!」
幼B「あいよー!ぎゅっぎゅっ……できたー!へいお待ち!」
幼C「わぁ、すごぉい!おいしそー!」
幼B「へへへー!」
幼C「パクパク……おいしー!」
幼B「あれ?」
幼C「どうしたのー?」
幼B「だって食べてないのにおいしーって変なのー!」
幼C「えー!だって土は食べないよー?」
幼B「土じゃないもん!たまごのおしゅしだもん!」
幼C「うう、で、でもー!」
幼B「頑張って作った、たまごのおしゅしだもん!!!」
幼C「あ、あわわ……な、泣かないでぇ」
幼B「たまごのおしゅしなのぉーーー」
幼C「う、うう……ぱ、パクパク!」
幼B「ひっく……ひっく……」
幼C「もぎゃ……お、おいしー……」
幼B「へへ……へへへぇ!そうでしょー!」
回想終了。この後Cは無事にお腹を壊しました。
*
C「たまごのおしゅし……へへへ……」
A「おい!しっかりしろ!」
C「はっ」
A「完全に目がイってたぞ、お前」
C「こ、これが走馬灯……?!ふわっ、口から土の香り!」
B「ねえねえ!美味しかった?!」
A「容赦なさすぎんだろ」
C「お、おお、おいしかったよ!」
B「へへへ、そっかー!よかったー!おかわりあるから、どんどん食べてね!」
C「い、いいん……」
A「こっち見んな」
B「ふんふんふーん!」
A「お前は上機嫌すぎるだろ」
B「えー?だって嬉しすぎるでしょ!大事なお友達と、大好物を一緒に楽しめるなんてさ」
A「……このやろう。それを否定したら完全におれが悪者じゃねえか」
C「大事な……お友達……」
B「へへー」
C「へへ……」
A「……お前、それで良いのか?」
C「えっ……ど、どういうこと?」
A「お前だけ我慢して、それで良いのかって事だよ」
B「我慢……?」
C「我慢なんて!!」
A「これからもずーっとこれ食うんだぞ」
C「ず、ずっと……」
B「な、なになになに、なんの話さ」
A「お前らが仲良しこよしなのは勝手だけどな、片方が押し付けてんの見るのは気分が悪ぃ」
C「……押し付けなんかじゃない……けど」
A「あとは知らん。俺は帰る」
帰ろうとするA、慌てて腕を引っ張るB。
B「あ、ちょっとー!まだ食ってないじゃーん!こらこら!」
C「あ、あ、あのね!」
B「わっ、びっくりした!なになになに、どうしたの」
A「頑張れよ。じゃあな、また来週」
B「えー!ちょっと!じゃあこれ!はい!またね!」
小包みを押し付けるB。手をヒラヒラ振りながら帰るA。
B「どしたのどしたの、しょんぼりしちゃって」
C「あのね……ちっちゃい時から、仲良くしてくれて……ほんとにありがとう」
B「急になにー!こちらこそだよ、ありがとう!大好き!」
C「へ、へへへ……えっとね、でもね……」
B「わっわっ、泣いちゃいそうな顔して!どうしたのどうしたの、よしよーし」
C「ぐすっ……ごめんね。あのね……私、実はね、ずっと前から……土を、食いたくないの……」
B「……え?」
C「ごめんね、ごめんね……頑張って食えるように練習したけど……ダメだった……」
B「ま、待って待って……ずっと前からって……えっ、でも一緒に」
C「ごめんね……嫌われたくなかったから……泣かせたく、なかったから……」
B「そ、っか……」
C「嘘をついてて、本当にごめんなさい」
B「そっかぁ……」
C「……ごめんね……」
B「ううん、教えてくれてありがとう。びっくりしたけど……というか!ずっと嫌なのに食わせてごめんね?!」
C「へ……?」
B「もー!てっきり土好きなんだと思って!ぜーんぜん気が付かなかった。ほんとごめん!」
C「う、ううん……」
B「お詫びにさ、好きな物教えて?いっぱい用意するよー!」
C「へ?!え、えっとケーキが好きなの……」
B「ケーキね!わかった!どこのお店にしよっかな〜!」
C「え、えっと……土、食わない私とも……仲良くしてくれる?」
B「へ?!もちろんだよ?!なんで?!」
C「……へへっ、そっかぁ」
B「えー!なになになにー!」
B宅の玄関前。佇むA。
A「お前らほんと馬鹿だよなぁ」
A、受け取った小包みから一つ土団子を取り出す。
A「おみやの土団子ってか?ふざけやがって」
ガブリと土団子にかぶりつく。
A「……はーーー……ほんと、馬鹿だよなぁ」
呆れたように笑いをこぼし、その場を後にする。
〜完〜