オニオン侍の玉ねぎ亭

TRPGと声劇が大好きなオニオン侍のブログです!

2020年08月

ぼくはたまねぎ
題名:ぼくはたまねぎ

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、

無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:10分弱

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※配役


たまねぎ(♂):ぼくはたまねぎ。10代。

男性(♂):ヤバイ。30〜40代。

女性(♀):謝りにくる人。30〜40代。

Mは胸中での発言です。

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※流血表現、胸糞悪い内容がございます。

ご注意ください!!

本文


たまねぎM「ぼくはたまねぎだ。いつも彼女を泣かせてしまう。だから、今日も部屋の隅でひっそりと過ごすんだ」

男性「あー、くそ、イライラすんな」

たまねぎM「けれど、いつもこの時間に彼はやってきて、ぼくを部屋から連れ出してしまう」

男性「はーい、今日も脱ぎ脱ぎしまちょーねー」

たまねぎM「そういって、にこにこ顔でぼくを裸にするんだ」

男性「んふ、綺麗な真っ白お肌でちゅねえ」

たまねぎM「ひとしきりぼくの体を撫でまわして、必ずこう言うんだ」

男性「いーっぱい、切り刻んであげまちゅねー!」

たまねぎM「そう言って、鋭く砥がれた包丁を取り出す」

男性「ゆーっくり、ゆーっくりいきまちゅよー」

たまねぎ「うっ…ぐ…」

男性「動くんじゃねえ、このグズが!!!」

たまねぎ「ひっ…ごめんなさい…」

たまねぎM「冷たい包丁の刃が、脇腹に当てがわれる。ゆっくり、ゆっくりと赤い線が浮かぶ。ぷくり、ぷくりとぼくの苦しみが液体となって滲み出す」

男性「ゆーっくり、ゆーっくり…」

たまねぎM「冷たい刃が通る、身が切れる、熱くなる、冷たい刃が通る、身が切れる、熱くなる」

たまねぎ「う…ぐ…」

男性「動くんじゃねえっつってんだろ!!擦り下ろされてえのか、ああ?」

たまねぎ「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」

男性「ったくよぉ…」

たまねぎM「体中から、ぼくの苦しみが溢れて、溢れて、止まらなくなる。そうしたら彼女が必ず現れる」

女性「ね、ねえ…それくらいにしたら…?」

男性「あ?んだとてめえ、俺に口出しすんなっつってんだろ、わかんねえのかこのクソアマが!」

女性「ひっ…ご、ごめんなさい…ごめんなさい…」

男性「ちっ…」

たまねぎM「毎日、こんなやりとりをして一度彼はタバコを吸いに行く。ぼくは、裸のまま、待っている」

女性「…ああ…。ごめんね、ごめんね…痛いよね、ごめんね…」

たまねぎM「傷ついたぼくのからだを見て、彼女はいつも涙を流す。ごめんね、ぼくのせいで、あなたはいつも泣いている」

女性「ごめんね…」

たまねぎ「…あの」

男性「おい」

女性「ひっ」

男性「俺が怖いか?あ?」

女性「あ…あ…」

男性「ちっ、さっさと失せろ」

たまねぎ「あ…」

たまねぎM「彼女は、躊躇いながらも走り去ってしまった。また、謝れなかった」

男性「はーい、ごめんねー、寂しかったでちゅねー、今いーっぱい可愛がってあげまちゅからねー」

たまねぎM「今夜の夜も、まだまだ、明けない」


たまねぎ「うっ、ぐ…」

男性「ちっ…ふらふらふらふらしやがって…!」

たまねぎ「ごめんなさい…ごめんなさい…」

男性「仕方ねえなぁ?言っても伝わらねえんじゃ、どうしようもねえよなあ?」

たまねぎM「この日は、いつもと違った。彼は包丁を置く」

男性「その邪魔くせえ足、切り落としちまうか!」

たまねぎ「ひっ…」

男性「おら、そこに寝ろ!」

たまねぎM「ぼくは突き飛ばされ、地面に転がる。そして彼は肉切り包丁を高らかと掲げ、ぼくに目掛けて躊躇なく振り落ろした」

たまねぎ「……!あ…れ…」

女性「っぐ、う…あ、ぁ…」

たまねぎ「…え…」

男性「あ?」

たまねぎM「女性の背中に、深々と肉切り包丁が突き刺さる」

たまねぎ「…なん、で」

女性「ごめん、ね…」

たまねぎM「女性が声を発すると同時に、大量の血が口から吐き出される。それをぼくは、全身に浴びた」

男性「邪魔しやがってこのアマぁ!!どけ!この!くそ!」

女性「うっ、ぐ…は、あ…」

たまねぎM「何度も、何度も、何度も振り下ろされる。もう、呼吸すらままならない彼女は、ぼくを見てまた泣いた」

女性「こんな…ことしか、できないお母さんで…ごめん、ね…」

たまねぎ「…あ…」

たまねぎM「泣きながら、彼女はぐったりとぼくにもたれかかって、それきり動かなくなった」

男性「おら!おら!くそ!くそくそくそ!…ふー、くたばったか…めんどくせえなぁ…」

たまねぎM「そう言って、いつも通り彼はタバコを吸いに行った。いつも通りなら、この後彼女が謝りに来るんだ。けれど、今日は」

たまねぎ「…起きて…」

たまねぎ「起きて…起きてよ…」

たまねぎM「ただ静かに、彼女は動かない。そうわかった瞬間、ぼくの苦しみが、堰き止められていた水のように溢れ出して、止まらなくなった。苦しくて、苦しくて、たまらない。だけど、悲しみに溺れてしまうその前に、これだけは伝えないといけないんだ」

たまねぎ「…お母さん…ごめんなさい…」

たまねぎM「ぼくは、お母さんを、ぎゅっと抱きしめて」

たまねぎ「待っててね」


草と肉
題名:草と肉

作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について

本作は著作権フリーであり、サークル活動、無料放送、

商業目的問わず自由にご利用下さい。

また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、

必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。

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時間:10分弱

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※配役


象(♀):優しいお母さん

仔象(♂):元気な男の子

チーター(♂):まだまだ若僧

ライオン(♂)/象たち(どちらでも):お節介したくなる年頃/群れで動くよ

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本文

象「あら、また来てくれたのね」

チーター「どうも」

仔象「あー!チーターのお兄ちゃん!こんにちは!」

チーター「こんにちは」

象「こらこら、お兄ちゃんはまだ怪我してるんだから」

仔象「あ…ごめんなさい。まだ、あんよいたい?」

チーター「大丈夫だよ」

仔象「そっかー!よかったー!じゃあ今日は何してあそぼっか!」

象「坊や、あんまりお兄ちゃんに無茶させたらだめよ」

仔象「はーい!ほら、お兄ちゃん行こ!」


象「遊んでくれてありがとうねえ。この子ったら、遊び疲れて寝ちゃったわ」

チーター「いや…この子は、俺の恩人だから。これくらいは」

象「…前脚の調子はどう?」

チーター「もう、すっかり」

象「それならいいのだけれど。なんだか、少し痩せたみたいで心配しちゃって」

チーター「そう、すかね」

象「ええ、ちゃんとご飯食べれてる?やっぱり怪我が痛むんじゃ」

チーター「食べて、います。大丈夫です。少し、休んでたせいで体が鈍ってるくらいで」

仔象「んー…なんのお話してるのお」

象「あら、起こしちゃったわね。まだ寝てていいのよ」

仔象「僕もお兄ちゃんとお話する…」

チーター「…ふあー、なんだかお兄ちゃんも眠たくなってきちゃったな」

仔象「わあ、おっきなあくび!」

チーター「一緒に寝てくれるか?」

仔象「うん、いいよー!」

象「あらあら。坊やは本当にお兄ちゃんの事大好きねえ」

仔象「へへへー。ママ、おやすみなさーい」

象「おやすみなさい」


仔象「へへ」

チーター「どうした、ニコニコしてたら寝れないぞ」

仔象「お兄ちゃんに会えて、僕、嬉しいんだー」

チーター「…そうか」

仔象「あ…でもね、お兄ちゃんが、ワニさんにあんよ噛まれちゃったから、喜んだらいけないよね…ごめんなさい」

チーター「謝ることはない。あの時見つけてくれて、お母さんを呼んでくれたおかげで、俺は今こうして元気でいられるんだぞ」

仔象「…あのね、あの時ね、すごくびっくりしたの。お水を飲みに行ったらね、お兄ちゃんがワニさんと喧嘩しててね」

チーター「驚かせたよな、ごめんな」

仔象「ううん!ガブってしたワニさんが悪いもの!お兄ちゃんは悪くないよ」

チーター「そうか…」

仔象「へへへ。あのね、ママはね、とっても強いから、ワニさんもやっつけちゃうんだ!」

チーター「ああ、すごかったな。かっこよかった」

仔象「へへへー。えっとね、だからね、お兄ちゃんはあんよを怪我しちゃったけどね、僕はお兄ちゃんに会えたからね、嬉しいんだ」

チーター「…そうか。俺も、会えて嬉しい。助けてくれてありがとうな」

仔象「へへへへ」

チーター「さ…今日はもう遅い。一緒に眠ろう」

仔象「うん!おやすみなさい、お兄ちゃん」

チーター「ああ、おやすみ」


ライオン「おい、お前」

チーター「…なんすか」

ライオン「最近、お前は狩りをしていないらしいな」

チーター「…前脚、怪我してるんで」

ライオン「ほう、それで狩りができないと」

チーター「それがなんすか」

ライオン「それで、草や魚ばかり食べていると」

チーター「…何が言いたいんすか」

ライオン「その前脚、もう治っとるんだろう」

チーター「…まだ、痛むんで」

ライオン「質問を変えようか。お前、食い物に感情移入しているな」

チーター「…は?」

ライオン「あの仔象のところに入り浸っとるらしいじゃないか」

チーター「それと、これは別に」

ライオン「命を助けられたからか?父性にでも目覚めたか?情が芽生えたか?」

チーター「あの子は」

ライオン「何にせよ、象という生き物は、私たちにとっての食い物にしか過ぎん。まあ、彼らをわざわざ襲って食おうなんて思わないが。それでも間違いなく、あれは食い物だ」

チーター「…だから何だって言うんすか」

ライオン「命を摂る事を、躊躇っとるんだろう」

チーター「そ、れは」

ライオン「まだお前も若い。本能に従うだけの大人になりきれんのもわかる。それでも腹は減る、食わねば死ぬ」

チーター「だから、俺は」

ライオン「草と魚で腹を満たしとるんだろう。ではなぜ、魚は食う。同じ命だろう」

チーター「…魚、とは…会話できないから」

ライオン「罪悪感が薄いと。だから食える」

チーター「し、仕方ないだろう。草をいくら食っても…」

ライオン「悪いなんて言わない。ただな、食っていい命とそうでない命を、お前が決めている事が問題なんだ」

チーター「なんだよ、それ」

ライオン「…警告はしたぞ。あとはしっかり食って、その怪我を治す事だな。まあ、治っていなければの話だが」

チーター「おい!待てよ!…なんだよ、くそ…」


チーター「…なんだ、象の…群れ?いつもと空気が違う…」

仔象「ママ…ママ…起きて、ねえ、ママ…」

象「坊や…ごめんね…」

チーター「何を取り囲んでんだ…?」

象たち「坊や、もうそっとしてあげるんだ」「ママはもう…」「ちくしょう、人間のやつらめ…」

仔象「やだやだやだやだ!!ママ、ママ、ママ…」

チーター「おい…これ…どうしたんだよ…」

仔象「あ…お兄ちゃん…」

チーター「おい…おい…死ぬなよ…息子置いて死んだらだめだろ…」

象「あら…こんにちは…今日も…来てくれたのね…」

チーター「どうしたんだよ…何が…」

象たち「人間たちが坊やを狙って」「それで助けに行ったんだけど、彼女だけ撃たれてしまって…」「残念だけどもう…」

象「だからね…お願い。私を…食べて」

チーター「な、にいってんだ…」

象「私の…願いは…あの子が…青い空の下で…豊かな大地の上で…ご飯をいっぱい食べて…仲間に囲まれて…元気に生きて…幸せに…暮らす事…」

チーター「だからあなたは生きなきゃいけねぇだろ!死ぬなよ…」

象「きっと…あなたのお母様も…あなたに…同じことを…願っているはずよ…」

チーター「何言って…」

象「だから…あなたは…私を…お肉をいっぱい食べて…しっかり生きなさい。あなたには…生きる資格と、義務があるわ…」

チーター「生きる…資格…」

象「そして…あなたが私の肉を食い破り…ハイエナや…鳥達が…私を食べて、命を繋ぐ…」

仔象「お兄ちゃん、ママを食べちゃうの?いやだよ、だめだよ、そんなことしないよね、やめて、やだやだやだ」

象「坊や…ママは…鳥さんや…他の動物さんになって…色んなところから…あなたを見守っているわ…だから、大丈夫…」

チーター「俺の…義務…」

象「さあ…私を食べて…私の義務を果たさせて…。お願いよ…」

仔象「ママ!ママ!目を開けて、ママ!」

チーター「…俺はまた…あなたに助けられるんすね…」

仔象「お兄ちゃん…?」

チーター「あなたの命…いただきます」

象「…ありがとう…。坊や…お兄ちゃんの事…嫌いになったら…だめ…よ…」

仔象「あ…あ…やめてやめてやめて!来ないで、お兄ちゃんやめてよ!」


ライオン「すっかり元気になったな」

チーター「…なんすか」

ライオン「ちゃんと肉食ってんだな」

チーター「まあ…」

ライオン「お前はチーターに生まれた。だから肉を食う、それだけだ」

チーター「…うす」

ライオン「だがな、食っていい命なんてない。だが、食わずに死ぬべき命なんてのもない」

チーター「…俺には、食ってでも…生きる資格と義務がある」

ライオン「お、わかってんじゃねえか。そうだ、だからお前は命を摂る覚悟を持って、しっかり生きろ」

チーター「…うす」

ライオン「それじゃあな、しっかり食えよ」

チーター「…なんなんだ、あのおっさん…」


象たち「さあ、そろそろ出発するよ」「次の場所はもっと草があるらしいわよ」「子供たち〜はぐれるんじゃないぞ〜」

仔象「はーい。…ママ、いってきます。きっと、見守ってくれてるんだよね。僕、いっぱい食べて、いっぱい大きくなるから。ちゃんと、みててね」


チーター「…ふぁ、よく寝た。さて…今日も食うか…」


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