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題名:土食いねェ!

作者:オニオン侍

人数:3人(1:2)


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【本作における著作権管理・利用について】


本作は著作権フリーであり、サークル活動、


無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。


また、いかなる目的での利用においても報告は不要であり、


必要に応じて改稿・編集をして頂いても構いません。


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(ご報告はいただけるとめちゃくちゃ喜びます。)


(配信などございましたらぜひお教えください!)


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時間:20分


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【配役】


○男性


名前:A

年齢:20代

概要:土を食わない



○女性


名前:B

年齢:20代

概要:土を食う



名前:C

年齢:20代

概要:実は土を食いたくない



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本文



B宅に集まるA、B、C。


C「やっほー、来たよー!」


B「へいらっしゃい!土食いねェ!」


A「お会計で」


B「つれねぇなぁ!」


A「帰るぞ」


B「まあまあ、そう言わず!上がって上がって〜!」


C「わーい、お邪魔しまーす!」


B「さささ、どーぞどーぞ!」


A「押すな押すな、わかったから」


C「わぁ、お部屋可愛いー!」


A「てっきり茶色一色にしてるのかと」


B「土カラーってか!土は塗るもんじゃなくて、食うもんだからねー!」


A「んなわけねぇだろ」


B「さーさ、ここ座って〜!すぐに始めるからねー!」


A「永遠に始めなくていいぞ」


C「とかいいつつ、ちゃんと座って待ってるから偉いよね!」


A「あ"?……この前の忘れたのか?」


C「……あー……あはは、そうだったね」



回想。先週の休日。A宅前にて。

インターホンを連打するB。渋々扉を開けるA。


A「……はい」


B「遊びにきーたよー!」


A「帰れ」


C「せっかく来たのにー!」


A「帰れ」


B「ほら見て!採れたての土!!」


A「持ち帰れ」


C「お昼まだでしょー?食べなよー!」


A「持ち帰れ」


B「ぬぬ……わかったよ!帰りますー!」


A「おう、立ち去れ立ち去れ」


B「一緒に食べたかったのになー!」


C「朝から頑張って採って来たのにー!」


B「しっとり赤土もあるのになー!」


A「ええっじゃあ食べます!とか言うと思ってんのか」


B「言うでしょ!!もー知らん!知らんぞー!」


C「頑固者ー!」


A「お前らで食べればいいだろ。食える量増えてよかったじゃねえか」


B「幸せは分けてこそですー!ねー!」


C「そ、そーだそーだー!」


A「……お前、食う気ねえだろ」


C「え"っ、やだなあ、そんな事ないよ」


A「そーかそーか。そんじゃ俺の分も美味しく食っといてくれ」


B「言われなくてもたくさん振る舞いますー!女子"土"会に変更しますー!」


C「え"っ」


B「え?」


C「あ、あー!大変!お腹痛くなって来ちゃったー!あいたたた」


A「演技力クソかよ」


C「あーいたたた、今は何も食べられなさそー!!」


B「大丈夫?!早く帰って休まなきゃ!」


C「ご、ごめんねー!あいたた、また来週ー!」


A「おう、2度と来んな」


B「来週は我が家にご招待してやるからな!覚えとけ!」


A「なんだその捨て台詞……」


立ち去るB、C。部屋に戻るA。


A「騒々しいにも程があんだろ……はぁ……っこいしょっと……」


ベッドに寝そべり寛いでいると、玄関の方から何やらゴソゴソと物音が聞こえる。


A「あ?なんだ?配達か……?」


不審そうに玄関の方へ視線を送る。


A「特に何も頼んでねえしな……まあ、いいか」


一度起こした上体を再びベッドに沈み込ませる。静かな部屋に物音が鳴り続ける。


B「えいっえいっ……んー……もうちょいいけるかな?!」


C「こ、声が大きいよ!」


B「やば!バレちゃうバレちゃう!」


A「……ん?空耳か……?」


B「しっかし、あいつも馬鹿だなー!こんなに良い土をみすみす逃すなんて!」


C「そ、そうだよね!」


B「あんまりにもかわいそうだから、こうしてお裾分けしてあげてるんだけどね!」


C「優しいなあ」


B「でもこういうのってやっぱりサプラーイズ!がいいじゃない?」


C「うんうん」


B「だからコソコソ詰め込んだらささーっと逃げなきゃねー!」


A「空耳じゃねえなこれ!あいつら帰ったんじゃなかったのか?!」


慌てて玄関へと駆けていくA


C「や、やばい!足音近づいてるよ!」


B「えいえいっ!よっしゃ!逃げるぞー!」


A「おいこら!!」


勢いよく扉を開く。それと同時に異様に扉が重たく感じる。


A「は……?」


B「ちょっとー!そんなに勢い良く開けたらこぼれるでしょー!」


C「あ、あ、えっとー」


A「扉クッソ重てぇ……お前ら何しやがった!」


B「もー、気がつくの早すぎ!せっかくサプラーイズしようと思ったのに」


A「サプライズだぁ……?おい、ポストどうなってんだこれ、ギッチギチじゃねえか」


B「サプラーイズ!!!!」


C「さ、さぷらーいず」


A「うるせぇ!何しやがった!」


B「ふっふっふ、開けてごらん!いいものだよ!」


A「ふざけんな!どうせ土だろ!」


B「さあ、さっさと開けるんだ!」


C「開けろ開けろー!」


A「ほんとふざけんなよお前ら……クソッ……」


ポストを開け、詰め込まれたそれをひとつまみ取るA。


B「テッテレー!」


A「やっぱり土じゃねえか!!」


B「喜べ!お裾分けだ!」


C「わー!」拍手


A「ふざけんな!人んちのポストに土詰め込みやがって!!」


B「ちょっと急だったからさー、本当はね?ラップとかに包んであげたかったんだけどー」


A「話を聞け!」


B「でも大丈夫!水で洗えばちゃんと美味しく食えるから!」


A「うるせえ!持ち帰れ!!」


回想終了。Aは大家さんに見つかる前に頑張ってお掃除しました。



C「いやぁ、先週は大変でしたね、あはは」


A「あ"?」


C「すいません……」


A「今日もな、断った方がめんどくせえ事になるから来てるだけだ」


C「あ、あはは……その節はどうも!」


A「お前も共犯だからな、覚えてろよ」


C「うう、すんまへん……」


B「お待たせー!」


A「微塵も待ってねぇけどな」


B「それじゃ始めるよ!」


C「わー!」拍手


B「土のフルコースパーティー始まり始まりー!」


A「すでに帰りてえ」


B「まずはこちら!前菜の盛り合わせです!召し上がれー!」


C「わ、めちゃくちゃ綺麗!すごーい!」


A「見た目はマトモなんだな……」


B「失礼な!味も完璧ですー!!」


C「えっと、これはなーに?丸くてキラキラしててすっごく可愛い……」


B「お目が高い!こちらはめちゃくちゃピカピカに磨き上げた土団子です!」


C「つ、つちだんご……」


A「無駄な技術持ちやがって……」


B「あったかいうちに召し上がれー!」


C「あったかいんだ……」


A「ホットな泥団子ってなんだよ、意味わかんねえな……」


B「土団子ですー!」


A「変わんねーだろ!」


C、震えながらナイフとフォークで土団子を割ってみる。どろり、と液体が溢れ出す。


C「ひ、ひい……中から何かでてきた」


B「あっそれはね、練りに練った土だよ!」


A「土の中に土を仕込んでやがる」


B「もー!2人とも冷めちゃうから早くお食べ!」


C「ひ、ひい……」


A「んな目でこっち見んな。助けんぞ」


C「いいん……」


B「……もしかして、食うの嫌だった?」


A「おい、俺の時とは随分扱いが違うじゃねえか」


B「当たり前だろう!」


A「このやろう!」


C「う、うう……い、一生懸命作ってくれたんだもんね……う、うう」


B「3日前から仕込みを始めたよ!」


C「ひい、本格的ぃ……」


A「馬鹿かよ……。一応聞くが、この後何が出てくんだ?」


B「待ちきれないのー?仕方ないなぁ!全部出しちゃうから食べながら待ってて!」


A「誰が食うか!」


C「う、ううう……」


A「目瞑って震えてまで食おうとすんな馬鹿」


B「へいお待ち!土のフルコース大集合!」


C「あわわわわ……」


A「見た目だけマトモなのが腹立つな」


B「えっとね、こっちがメインの土ハンバーグで、スープは土のポタージュ!副菜は土のキッシュだよ!最後のデザートは赤土のプディング!さ!召し上がれ!」


C「な、なんでいい香りがするんだろ……」


A「謎の技術持ちやがって……」


B「土(ツチ)ンバーグはこのソースをかけるとより美味しくいただけます!」


A「小粋に略してんじゃねえぞ」


C「ち、ちなみに何のソース?」


B「オリジナルのガーリックオニオン"土(ツチ)"ソースだよ!」


A「ソースまでお手製かよ。もういっそ褒めてやろうか」


B「え!照れるんだけど!」


A「まだ褒めてねえよ!!」


C「う、うう……」


B「そんな事より食って食って!」


C「……うん、い、いただきます」


A「おい馬鹿、正気か」


C「私たちのために用意してくれたから……!」


B「ワクワク!」


C「うっ。そ、そんな目で見ないで……」


A「お人よしも考えもんだな」


B「ワクワク!ソワソワ!」


C「〜〜!!えいっ」


C、土ンバーグのひとかけらを口に放り込む。芳醇な土の香りが口いっぱいに広がる。


C「も、もぎゃ……」


A「おい、しっかりしろ!」


C「そういえば、ちっちゃい頃からこんな感じだったなぁ……うふふ……」


A「おい!帰って来い!おい馬鹿!」



回想。B、C幼少期。砂場で仲良く遊ぶ2人。


幼B「へいらっしゃい!おしゅしやさんだよ!」


幼C「たまごのおしゅしくーださい!」


幼B「あいよー!ぎゅっぎゅっ……できたー!へいお待ち!」


幼C「わぁ、すごぉい!おいしそー!」


幼B「へへへー!」


幼C「パクパク……おいしー!」


幼B「あれ?」


幼C「どうしたのー?」


幼B「だって食べてないのにおいしーって変なのー!」


幼C「えー!だって土は食べないよー?」


幼B「土じゃないもん!たまごのおしゅしだもん!」


幼C「うう、で、でもー!」


幼B「頑張って作った、たまごのおしゅしだもん!!!」


幼C「あ、あわわ……な、泣かないでぇ」


幼B「たまごのおしゅしなのぉーーー」


幼C「う、うう……ぱ、パクパク!」


幼B「ひっく……ひっく……」


幼C「もぎゃ……お、おいしー……」


幼B「へへ……へへへぇ!そうでしょー!」


回想終了。この後Cは無事にお腹を壊しました。



C「たまごのおしゅし……へへへ……」


A「おい!しっかりしろ!」


C「はっ」


A「完全に目がイってたぞ、お前」


C「こ、これが走馬灯……?!ふわっ、口から土の香り!」


B「ねえねえ!美味しかった?!」


A「容赦なさすぎんだろ」


C「お、おお、おいしかったよ!」


B「へへへ、そっかー!よかったー!おかわりあるから、どんどん食べてね!」


C「い、いいん……」


A「こっち見んな」


B「ふんふんふーん!」


A「お前は上機嫌すぎるだろ」


B「えー?だって嬉しすぎるでしょ!大事なお友達と、大好物を一緒に楽しめるなんてさ」


A「……このやろう。それを否定したら完全におれが悪者じゃねえか」


C「大事な……お友達……」


B「へへー」


C「へへ……」


A「……お前、それで良いのか?」


C「えっ……ど、どういうこと?」


A「お前だけ我慢して、それで良いのかって事だよ」


B「我慢……?」


C「我慢なんて!!」


A「これからもずーっとこれ食うんだぞ」


C「ず、ずっと……」


B「な、なになになに、なんの話さ」


A「お前らが仲良しこよしなのは勝手だけどな、片方が押し付けてんの見るのは気分が悪ぃ」


C「……押し付けなんかじゃない……けど」


A「あとは知らん。俺は帰る」


帰ろうとするA、慌てて腕を引っ張るB。


B「あ、ちょっとー!まだ食ってないじゃーん!こらこら!」


C「あ、あ、あのね!」


B「わっ、びっくりした!なになになに、どうしたの」


A「頑張れよ。じゃあな、また来週」


B「えー!ちょっと!じゃあこれ!はい!またね!」


小包みを押し付けるB。手をヒラヒラ振りながら帰るA。


B「どしたのどしたの、しょんぼりしちゃって」


C「あのね……ちっちゃい時から、仲良くしてくれて……ほんとにありがとう」


B「急になにー!こちらこそだよ、ありがとう!大好き!」


C「へ、へへへ……えっとね、でもね……」


B「わっわっ、泣いちゃいそうな顔して!どうしたのどうしたの、よしよーし」


C「ぐすっ……ごめんね。あのね……私、実はね、ずっと前から……土を、食いたくないの……」


B「……え?」


C「ごめんね、ごめんね……頑張って食えるように練習したけど……ダメだった……」


B「ま、待って待って……ずっと前からって……えっ、でも一緒に」


C「ごめんね……嫌われたくなかったから……泣かせたく、なかったから……」


B「そ、っか……」


C「嘘をついてて、本当にごめんなさい」


B「そっかぁ……」


C「……ごめんね……」


B「ううん、教えてくれてありがとう。びっくりしたけど……というか!ずっと嫌なのに食わせてごめんね?!」


C「へ……?」


B「もー!てっきり土好きなんだと思って!ぜーんぜん気が付かなかった。ほんとごめん!」


C「う、ううん……」


B「お詫びにさ、好きな物教えて?いっぱい用意するよー!」


C「へ?!え、えっとケーキが好きなの……」


B「ケーキね!わかった!どこのお店にしよっかな〜!」


C「え、えっと……土、食わない私とも……仲良くしてくれる?」


B「へ?!もちろんだよ?!なんで?!」


C「……へへっ、そっかぁ」


B「えー!なになになにー!」


B宅の玄関前。佇むA。


A「お前らほんと馬鹿だよなぁ」


A、受け取った小包みから一つ土団子を取り出す。


A「おみやの土団子ってか?ふざけやがって」


ガブリと土団子にかぶりつく。


A「……はーーー……ほんと、馬鹿だよなぁ」


呆れたように笑いをこぼし、その場を後にする。


〜完〜