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題名:聲と贄と
作者:オニオン侍

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※本作における著作権管理・利用について
本作は著作権フリーであり、サークル活動、無料放送、商業目的問わず自由にご利用下さい。
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※グロテスク、暴力的な描写がございます。ご注意下さい。

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時間:10分弱

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※配役

○男性

名前:男
年齢:20代
概要:新しい「食材」を見つけた

名前:B
年齢:自由
概要:痛がりがち。演じ分けが忙しい。

○女性

名前:N(ナレーション)
年齢:自由
概要:雰囲気作りはあなたのお仕事

名前:A
年齢:自由
概要:痛がりがち。演じ分け有り。

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本文



N:ある日突然「全ての食材の聲」が聞こえるようになった。牛、豚、鶏…全ての動物、野菜、果物、穀物…全ての植物、その全ての聲がはっきりと。調理されてなお、その聲は聞こえ続ける。

A:いっぱいごはんくれてありがとう。

B:おひさまあびてきもちいねえ。

A:おかあさんおとうさんはどこにいったの。

B:いやだいやだいたいいたいいたいやめてやめてやめて。

A:あついあついあついあついよ。

B:どうしてすてちゃうのやだよ。

N:唯一、聲の聞こえぬ食材があった。

男:なんだ…こうすりゃよかったんだ。はは…大発見じゃね?

N:暗い台所の隅。部屋に滲む咀嚼音。

男:さすがに殺す前はうるせえけど…他のと違って料理しちまえば静かになるんだな。あー…静かに飯食えるの久しぶりだ…懐かしいな。

N:食材は皆全て、胃液に触れるまでその聲を上げ続ける。遡ること数時間前。街中のレストランにて。

A:ね、ねえ…どうしたの?顔、怖いんだけど…

男:俺さ、あんまり趣味とかなくてさ。

A:え…?あ、うん…。

男:美味い飯食うのが、まあ唯一の楽しみだったわけ。

A:わっ私も、美味しいご飯は好きよ。

男:それなのによ、最近の世の中どうなっちまったんだろうな?飯が、うるせえんだ。

A:う、うるさい…?

男:俺が何食おうか勝手だろ?それなのにぎゃーぎゃーわめいてよぉ…。これもそうだ、さっきからうるせえよ。

B:あつあつのハンバーグになれた。嬉しいなぁ。ねえ、早く食べてよ。さめちゃうよ。

A:えっと…これって…ハンバーグ、だよね?

男:食えっていう割によぉ、ナイフで刺してやったら喚くんだ。

B:あ"っ…い、いたい…いたいいたいいたいいたい…はやく、はやく食べて…はやく…食べて…。

A:…ごめん。何を、言っているのかわからないよ…。

男:……は?

B:はやくはやくはやくはやく、いたいいたいいたいいたいいたい。

A:体調悪いの…?大丈夫…?

N:テーブルに叩きつけられるナイフとフォーク。一同の視線が男に集まる。

男:…俺の頭がおかしいって言いたいのか?なあ。

A:ち、ちが…。

男:なあ、声、聞こえるよなぁ?うるせえこいつらの声がさぁ…。

B:いたいよ、いたいよ、食べてよなんでどうしてひどいひどいひどい。

A:ま、待って…落ち着いて話そう?

男:…ちっ。

A:えっあっ、待って!

N:会計を女に済まさせ、男は自宅へと足を運ぶ。怯えながらも女はそのあとを追った。

男:座れよ。

A:う、うん…。

B:女の子だ、いらっしゃい、ぼくを食べてくれるかな。甘くて美味しいよ!

男:うるせえなぁ!!静かにしてろよ。

A:ひっ…ご、ごめ…あ…。

N:女は肩を震わせ、思わず発しそうになった声を両手で塞いだ。

男:…お前はえらいなぁ。

A:え…?

B:なでなでしてる、いいなぁ、ぼくもぼくも。ママにあいたいなぁ。

男:黙れつったら、ちゃんと黙ってくれるもんな…。

N:男は優しく女の頬を撫で、口角を上げ微笑む。男の手には、包丁が握られていた。

A:ひっ…ぁ…あ…。

男:こいつらはさぁ。

B:い"っ…いたいいたいいたい、早く食べて早く!!!

男:刺しても。

B:いたいいたいいたいいたい!!

男:刺しても。

B:はやくはやくたべてたべて!!

男:この通りうるせぇんだ…。なぁ、聞こえるだろ?

A:…あ…、き、聞こえるよ、聞こえる。

N:必死に女は頷いてみせる。トマトからずるりと包丁が抜かれ、そして女に向けられた。赤い汁が滴り落ちる。

男:だよなぁ…じゃあ、今、こいつ、なんつってる?

A:え、あ…。

N:沈黙。カチカチと女の奥歯が揺れる音が微かに響く。

男:…そうか、そうなんだな、あーわかっちまったな、そうかそうかそうか、おかしいのは世界じゃねえのか、俺なんだな?なあ、だからそんな目で俺を見てんだろ。なあ?

A:あ"っ…い、痛い痛い、痛いよ…やめて、やめてやめてやめて!

N:向けられた包丁は、女の肩口にゆっくりとねじ込まれていく。

男:あーあーお前もうるせえな、黙れよ、なあ、黙ってくれよ!

A:ひっ…ひっ…うぐっ…ふっ…ふっ…ぐ…ぅ…。

男:……。…へえ。

N:必死に両手で口を塞ぐ女。その様子に、卑しい笑みを浮かべる男。容赦なく包丁は抜かれ、再度切り落とすように肩口に突き立てられる。

A:んんんんんんん"っ!!

男:偉いなぁ、お前は偉いよ。俺が黙れつったからちゃんと静かにしてんだもんなぁ?偉い、偉いよ。

A:ひっ…っぐ…ぅ…。

N:そして、優しく頬を撫でながら女の右腕を切り落とす。同時に、塞がれていた口が開けられ、激しい悲鳴が部屋に響いた。

男:あーあーうるせえ、うるせえ、うるせぇ…。

B:いたいいたいいたいいたい。

A:いたいいたいいたいいたい。

B:なんでこんなことするの。

A:な…んで…。

男:…うるせえ、黙ってろ。

N:男は、女の右腕に耳を寄せる。そして。

男:あはっ。

N:子供のような無邪気な笑みを浮かべ、嬉々として右腕にかぶりついた。それはあまりにも不気味で異様な光景だった。

男:…いいじゃん、いいじゃん、いいじゃんかよぉ。切り離しちまえば静かになんだなぁ、おい!

A:ひっ…ひっ…やめ、やめて…やめて…。

B:いたいいたいいたいいたい。

男:お前さ、俺のこと愛してるって言ってたよな。

A:…はっ…はっ…。

N:女の意識は既に途絶えかけていた。息が上がり、目は虚でどこを見ているかもわからない。

男:俺のために色々してくれたもんな、ありがとうな。

B:ひどいひどいひどい。

男:最後まで黙ってくれてんだな、ありがとうな。お前は最高だよ、最高の-。

間。

N:唯一、聲の聞こえぬ食材があった。

男:なんだ…こうすりゃよかったんだ。はは…大発見じゃね?

B:女の子食べ物じゃないよちがうちがうちがう。

N:暗い台所の隅。部屋に滲む咀嚼音。

男:さすがに殺す前はうるせえけど…他のと違って料理しちまえば静かになるんだな。あー…静かに飯食えるの久しぶりだ…懐かしいな。

N:幸せそうに女を食べる男の姿が、そこにあった。女を一口頬張り、堪能するように咀嚼する。

A:わたしはあなたをー。






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